とある兄弟の成長記録 01.




兄はいつだって弟の模範でいるべきだ!――これがオレの持論である。そういや持論…てどう書くんだっけ?つか意味合ってる?んまぁいいや。とにかくオレは、弟である賢人(けんと)の前ではいつだって“立派なにぃちゃん”でいたいんだ。

「ねぇ康人(やすと)兄さん、早くお風呂入っちゃいなよ?兄さんが入んないと僕も入れないんだから」
「あー…ちょい待ってこのマンガ読み終わってから〜」
「兄さん…」

小さい頃、毎日毎日あっちこちに走り回って遊んでいた生傷の絶えないオレとは正反対に家ん中で図鑑とかを読むのが好きだった賢人は、たまに外に出るといつも近所の悪ガキにちょっかいを出されたりしていた。
その度にオレがででーんと登場して、そんな悪ガキ共から賢人を助けてやったもんだ。

「昔はあんなに弱くてオレがいないとなんも出来なかったくせにな〜…」
「いつの話してるの…」

今では賢人は、その名前にぴったりな秀才に育っていた。体付きもあの頃とは比べものになんないくらいに逞しくなって。
そういやオレが中学ん時ダチとゲームばっかやってた時も、あいつ部屋で筋トレとかしてたっけな…

「あ、そうだ賢人!」

いいこと思い付いた!
読んでいたマンガをぱたんと閉じてベッドへ放り投げ、部屋のドアの縁にもたれ掛かるようにしてオレを見下ろす賢人にピッタリ視線を合わせた。

「一緒に風呂入ろーぜ!」



とある兄弟の成長記録



「ちょっと…何言ってるの」
「なんだよそしたらお前も早く風呂終われていいだろ?兄ちゃんがお前の成長具合をチェックしてやる!」

うしし。賢人が痩せマッチョなのは知ってるけど俺だってそこそこに筋肉くらいあんだ。ここは兄である俺がいっちょ威厳?を示してやんねーとな!

賢人の眼鏡の先から覗く奥二重でキレ長な目が、一瞬はっきり戸惑いの表情を見せた。

「嫌なんて言わせねーぞ!ほら、早く行こーぜ」

まぁはっきりいってそんなことはどーでもいいのだ。兄弟仲良く風呂なんて絶対いいことだろー!
俺はなかなか頭を縦に振らない賢人の腕を引っつかんでずかずかと風呂場に向かった。



* * *



「は…おま、まじ?」

高校生になった弟の裸は、想像してたよりもすげー逞しくなってた。まじで腹筋ってこんな割れるもんなの?

「ちょ…!兄さ…」

そそくさと風呂場に片足を突っ込もうとしてる賢人の腕を引っ張って引き止め、とりあえずその立派な腹をぺたぺた触ってみる。なんだこれ!すげーかてぇ!

「うわ、すげー」
「もう…そんなとこ触ってないで兄さんも早く脱ぎなよ?僕いい加減寒いんだけど」

あ、やべ。
賢人の眉間にシワが寄り始めたのを確認した俺は、ぱっと手を離してへらへらっと笑った。

「じゃあ先行くよ?」

からからから…ぴしゃん

風呂場のドア越しに映る賢人の影を見ながら、ほんとあいつ優等生ヅラしてるくせに体格よくなったよなぁとため息を吐いて、自分もぱっぱと服を脱いだ。

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