互いの利益のために04




「や〜でもよ、なんかアレだな?ちょっとなんつーかマニアックプレイみたむぐぐぐぐ…っ?!」

その軽薄な口を手で押さえてみなまで言わせないようにする。両手を頭の後ろで組んでいた和成は、一瞬驚いたような顔をしたものの目がまだニヤけている。…このやろう。
眉を寄せつつもゆっくりと手を離せば、またその薄い口が性懲りもなくすぐに開く。

「…っ、はぁ、は、なんだよ秀一恥ずかしがんなって!」
「つか……なんでお前はそんな普通なんだ…」
「ぇえ〜?俺は秀一だったら別に何したって平気だぜ?つかむしろちょっと勃ってるし、オレ」
「………………え?」
「いやだから、ホラ」

和成の手がぬっと伸びて俺の手を掴んだかと思えば、そのまま和成の股間に強引に押し付けられた。ごり、と硬いなにかが手の平に当たる。

「なっ……、ちょ、かずなり…」
「うわ何その反応、やばいんだけど」

和成を直視できずじわりと俯く。多分今ちょっと顔赤いかも知れない。
そんな俺の反応を、和成は楽しんでいるように見えた。

「からかうなって」
「からかってねーよ。なんか秀一、可愛いからさ」
「ばっ…」
「離すなって、なぁ、ほら分かる?お前の飲んで勃っちゃうとか、俺どーしたんだろうな?」
「しっ、知るか」

手を離そうと力を込めれば、更に強い力によってそれを制止され先程よりぐっと股間に手を押し付けられてしまう。
何のプレイなんだよこれは。和成、お前は何がしたいんだ。つか何でお前が勃つんだよ。それに可愛いとか意味が分からない。

「和成、」
「ん?」

いい加減手を離せ冗談はやめろと言おうとしたのに、突然消えた照明によってエレベーター内が真っ暗になるという非常事態のせいで言葉にはならず、代わりに和成が暗闇に乗じて俺の膝の上に跨がるという暴挙にでた。

こんな時に、停電、とか……

壁を背にして座っている俺は、和成が俺の上から退かない限り立ち上がれない。
ただでさえ緊急事態だというのにその上照明も切れるとか正気の沙汰ではない。

小さい子供ではないから真っ暗が怖いとかそういうことではないのだけれども、それでもこんな急にライトが消えたら誰だってびっくりする。しかもそのタイミングで密着されたら余計に。

「ちょ、和成…」

真っ暗で視界0の中、手探りで奴の身体をぺたぺたと触って腰辺りを引っ掴み引きはがそうと力を込める。

「やーん秀一のえっち!」
「お前何がしたいんだ……っん!?」

突然和成が前屈みになる気配がして、何事かと思えば奴はこの暗闇の中一寸も違わず真っ直ぐに俺の両頬に手を当ててきた。
そして次の瞬間には唇に何か柔らかい感触。
え、何これまた俺キスされ……

「んっ…!んんん〜…!」

いつの間にか和成の手は俺の後頭部をがっちりホールドしており、和成の唇は一向に離れてくれない。
それでもなんとか抵抗のような声をあげてみるが、張り付いたように唇を塞がれてしまってはあまり意味がないらしい。
俺はだんだん苦しくなってきて、和成の服を引っ張ってもうやめろと訴える。

「ん…」
「っはぁ…はっ…」

訴えに気付いたのかゆっくりと唇は離れ、息も絶え絶えな俺とは逆に呼吸ひとつ崩さずに俺を見据えてくる和成。
暗闇に漸く目が慣れたのか、和成の真剣そうな面持ちがハッキリと視界に入ってくる。

「和成お前なにを…」
「喋んなって、……な、もっかいさして?」

やけに低い声だった。いつもおちゃらけてて、ふざけるのが基本姿勢な和成の陽気な聞き慣れた声とは真逆の、艶があって少し掠れたその声に思わず口をつぐむ。

こんな非現実的な状況下で、すでに人には言えないことをしてしまった後で、目の前には見慣れない雰囲気の親友が熱の灯る姿勢を浴びせてきてて。
こんなもん、流されないやつがいるだろうか。

俺は黙ったままコクリと頷き、嬉しそうな気配を纏った和成がまたゆっくりと距離を詰めてくるのを、心なしかドキドキしながら受け入れていた。

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