とある兄弟の成長記録 04.




「やめ…っ、なにす…だよ…っ」

両手で包むように触れられたそこは、初めて経験する他人からの刺激にいとも簡単に質量を増す。

「質問に答えて?兄さん」
「なっ…、な、なんでんなこと…」

こっ、この弟は…!自分がモテるからって人のことバカにしすぎだろ……俺がまだ童貞なことくらいそこ見りゃあ分かるだろっ……そうじゃなかったら、こんな、弟にちょっと触られたくらいで反応したりしねぇって。

「…兄さん」
「う…うるせーな…、ほっとけよ…どーせ俺は、」
「俺は?」
「どっ、童貞だよ……んむっ?!」

言った途端急にすっと顎に手をかけられて、何事かと思いながらもそのままヤツを見つめていたら、ゆっくりと顔に影がかかって……何故か俺は賢人にキスされていた。

「…もしかして、ファーストキスだった?」

にたりと口角を上げる賢人。

「おまっ…いい加減に…」
「僕も」
「へ?」

僕も初めてだよと、賢人はふわりと笑った。

「ぜってー嘘だ!超手慣れてるじゃん!」
「嘘じゃないよ、分からない?」

俺の手をとって、そっと賢人の胸にあてがわれる。

「!?」
「……ね」

なんだこいつ。めっちゃ胸ドキドキしてんじゃん。

「お風呂に入ってから、ずっとこうだったよ」

やけに落ち着いた声だった。
目を丸くしながらでヤツを見上げれば、びっくりするくらい綺麗に微笑む賢人とバチリと視線が重なった。うお、なんだその笑顔は…

「そ、そそそっか…はは」

なんか急に恥ずかしくなってきた俺は、照れ隠しみたいに頭をぼりぼりかきながら目を泳がせる。

「兄さん、僕は」
「あーっ!あはは、なぁ、もうあがんね?湯あたりとかしたらアレだし…な?」

うまく説明出来ねんだけど、なんだろう…このまま賢人の紡ぐ言葉を黙って聞いてたらいけない気がしてっつか別に嫌とかではないんだけど……んん?よく分かんなくなってきた。

「はぁ……あー…うん、そうだね。あがろうか」

一瞬複雑そうな顔をした賢人は、ため息と一緒にその何かを吐き出したみたいに吹っ切れた表情に変わって。
それを確認した俺は心のどこかで何か物足りないような気持ちになりながらも、ざぶんと湯舟から立ち上がった。

「じゃー俺先出るな?」
「兄さん…」
「ん?」

振り向いたその先には、すっかり邪気の抜けた弟の笑顔があった。

「好きだよ」
「お?俺もだぞ!」

にししと微笑み返して、なんともいえない幸福感?みたいなのが体中を巡っていくのを感じながら俺はぴしゃんと少し雑に風呂場のドアを閉める。

ははっ、なんだなんだ賢人のやつ。可愛いとこあんじゃねーか!
思い出しただけで顔が綻んでしまいそうな賢人の笑顔を頭に浮かべながら、また一緒に風呂入んのも悪くないなぁなんて一人でニヤけていた。



---fin---



全速力でその好きちがーう!とツッコミにいきたいです。
弟の気持ちに兄は気付いているのかいないのか。きっと今度は兄の寝床へ夜ばいをかけに賢人くんが行くんだろうなと信じてます。




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