生真面目ホワイトチョコおまけ




あーやばい。マジやばい。マジでやっちゃった。あーどうしよ。
きっと今頃、あいつすげー悩んでる。


生真面目ホワイトチョコ
      (おまけ)



そういや、いつからあいつを好きになったんだっけか。

あー…最初は、クラスにあまり馴染めずに休み時間の度にいつも一人で本を読んでいるあいつがただ気になって、声を掛けたんだ。

「よっ、何読んでんの?」

あいつの隣の席にどかっと座り、本を覗くとそこには『友達の作り方』なんて文字が目に入ってきて。
あー、そんな本を読んじゃう位に、こいつは寂しかったんだろうかとか、つかそもそもそんな本を読むってことがちょっと可笑しくて。
更に、急に俺に声掛けられたもんだからって、あわあわと慌てるあいつの仕草もなんか可愛くて、自然と笑みが零れた。

「あ、いやこれは…その…」
「はははははっ!お前おもしれーのな!そんな本読まなくたって、友達なんてすぐ出来るもんだぜ?」


こうして俺とあいつは友達になった訳だ。
それからは、あいつも俺に段々と心を開いてくれるようになって、笑顔になる回数も増えて。
そうしている内にクラスの連中も、少しずつあいつと仲良くなっていった。



自分の気持ちに気付いたのは多分、あいつが俺以外の奴等とも馴染み始めた時期。
最初は嫉妬みたいな、…なんだろう「いつの間にか俺以外の奴と楽しそうに話しやがって」みたいな、そんな醜い考えから始まった。

それはどんどん度を越すようになって、「あいつは俺とだけ仲良くしてればいいのに」なんて思うまでになって。

これっておかしくね?ってやっと気付いて、よくよく考えたらこれが好きってことなんだと自覚した。なんかすげー捻くれてて、歪んだ感じだけどな。


…って、それが一年前のはなし。

そっから俺はずっと、あいつを好きだという気持ちを隠しながら毎日過ごしてきた。

でも、やっぱ我慢出来なくて。
伝えよう、って、思った。




そんなこんなできたる二月十四日そう、バレンタインデー。女の子が好きな男の子にチョコをあげると有名な、そんな恋する乙女の一大イベント。
そんな日に本来なら貰う立場にいるはずの男の俺は、自分の好きな男の子にチョコをあげてしまったわけだ。

「甘いもん好きなら食ってよ」

なんて、余りもんでも渡すかのように渡したくせに、綺麗にラッピングしてもらって挙げ句の果てにはメッセージカードまで付ける始末で。

あいつは、どう思ったんだろうか。



チョコを渡したその日の夜、やっぱり我慢出来なくて電話した。

「お前をからかった訳じゃないことだけは分かるはずだから」

なんて、すげー曖昧で遠回りな言い方しか出来なかったけど、メッセージカードにハートマークが書いてあるんだからそういうことだ。つまりは、告白。

そもそもクソが付く位に真面目な性格してるあいつが、ハートマークなんかで俺の気持ちを理解すんのか?なんて危惧もしてたっちゃーしてたんだけど、そんなのは取り越し苦労だったようで、チョコを渡した次の日から見事に意識されてしまってるみたいだ。




「おっす」
「わわわわ!そ、その、高橋君…お、おはよう」
「昨日の、迷惑だったよな?わりい」
「ややややそんな滅相もない!…チョコ、美味しく頂いた」

朝、学校行く途中で運よくあいつを見掛けた俺は、不自然にならないよう、出来るだけいつもの自分でいれるように取り繕いながら声を掛けた。そしたらこの反応。可愛い。可愛過ぎる。

「お、おーうん。旨かったなら何より」
「あ、あああの!たかはし、君」
「ん?」
「あの、メッセージカード、拝見させていただいたのだが、あ、あ、あれは、そそそその」
「うん、そーゆー意味に取ってもらって構わない」
「…!…あー…えええと、高橋君。僕は、その、あの」

え、ここで即効フラれんの俺?こんなすぐ?いやいや気持ち悪がられてシカトとかされるよりはマシかーそうだよなー。
心の中で色んな想いが駆け巡りながら、じっと目の前に居るメガネを掛けた想い人を見詰めた。

「あっ、いや…その……ぼぼぼ僕、こういう機会は初めてで、えっと、もう少し待ってくれたらありがたいのだが…」

キモチワルイ、とかそういうレベルの話をされる覚悟をしてた俺は見事に拍子抜けした。

「えっ!俺の事気持ち悪く思わねーの?」
「えっ…何故?」
「えっ、なんでってそりゃあ…」
「僕は――…」

自分を好いてくれた相手に対して、そんな感情を抱くなど有り得ない。――そう言って彼は顔を赤らめ走り去っていった。




そんな場面から約一ヶ月。
あれからもあいつは、授業中にふと目が合うとビクッと肩を揺らしながら視線を逸らしたり、かと思えば「一緒帰ろうぜ」って誘うと「あーいや用事が云々――かたじけない」と尽く断られたり。

何を思ってのその態度なのかがサッパリ分からないけど。っま、しょーがねーやな。このままちょっと拗れた友達の関係でいるのも、あいつがそう望むなら受け入れよう。

そんなことを薄ぼんやり考えながら帰り道を歩いていると、俺ん家の近くの公園で一人佇むあいつの姿を発見してしまった。

「おーーい!」

あいつは俺の声に気付いたのかゆっくりとこちらに歩を進め、ぴたりと目の前で足を止めた。

「高橋君」
「ん?」

そして、無言のままハイっと小さな包みを渡され「これにて失敬」とそれだけを残して、あいつは逃げるように俺の前から姿を消した。

ホワイトデーの、つもりなんかな…。そういや今日は三月十四日、ホワイトデーだ。律儀にお返しくれるなんて、やっぱあいつは真面目だよ。
…この中身は一生食えねぇかも。




「…やべ、緊張してきた」

家に帰ってまず一番始めにしたこと、それは勿論、さっき貰ったホワイトデーのお返しの箱を開封することだ。
中身は一生大事に取っておこうって思ったんだけど、やっぱ気になるし、一応開封しときたいし。…なんか緊張すんのな、これ。

…とか考えながら包装紙を破いちゃわないように丁寧に開けると、そこにはどっかの高級な店のやつっぽいホワイトチョコらしきものと、その箱の上に小さな封筒が置かれていた。
封筒を、おそるおそる開いてみる。


『拝啓――高橋君

先月はどうもありがとう。


ふつつか者ですが、これから宜しくお願い申し上げます』


ん?どういう意味にとりゃあいいんだ?“これからも友達として宜しく”ってことか?
考えるよりまず行動だ。…今の俺にもう怖いもんなんかないしな。

携帯のメモリーからあいつの番号を出してかけてみた。思いのほかすぐに電話に出たところをみると、もうあいつは家に帰ったぽい。あーやべ、緊張しまくり。

「もっ、もしもし」
「あー俺。さっきはありがとな!」
「あーいや、こちらこそ」
「えっと、あれ見たんだけどさ」
「あ、あぁ」
「どゆこと?」
「あー…あああああ、高橋君」
「ん?」
「誠に恐縮な話なんだが…」
「うん?」
「なにやら、僕は恋を患っているらしくてだな…」
「?」
「…それは、妹曰く君にしか治せないそうだ」
「えっと、それってどういう」
「ふつつか者ですが高橋君」
「ちょ、ちょっと待って?ちょっとよく話が見えないんだけどそれって、友達としてこれからも宜しくって受け止めてオッケー?」
「ああああいや違っ…」
「違うの?」
「あの、僕はつまり――」


――どうやら高橋君のことを好いているようで――

そんな言葉が返ってきて、俺は息が止まるかと思った。

「えっ…マジ?マジ?…じゃあ、付き合って、くれんの?」
「あ…あぁ。よ、宜しく頼む」

あ、今日俺死ぬんかな。まさか両想いになれるなんて、夢にもみてなかった。



---fin---




爽やか君視点でボツにしたものです。爽やか君は意外と黒い部分も持ってたり…


そして次ページからは続編ですー!

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