とある兄弟の成長記録 02.




「ちょっと…風呂狭いんだから僕が体洗ってる時は湯舟に浸かっててよ」
「はぁ?なんでだよ!俺だって体洗ってから中入りてーもん!」

バスチェアーに座る賢人の横からボディソープを掴み、肘で賢人の肩をつんつんとつつく。おいここは俺が座んだよ、という意味を滲ませて。

「全く兄さんは昔っから我が儘というか無鉄砲というか自分勝手というか…」

俺が遠回しに意味を滲ませなくてもそんな意図くらい簡単に察することのできる頭のいい俺の弟は、分かりやすく嫌そうな顔をしたあとにすくっとイスから立ち上がった。

「しょうがないから僕先に中入るけど…こんなことなら一人ずつで入った方が効率よかったでしょ…ってどこ見てんの!」
「んあ?あぁ」

賢人は慌てたように両手でそこを隠す。なんだよ女々しい奴だなー。

「あぁ、じゃないよ本…っちょ!」
「ちんこまででかいとかずりぃーぞ!」

賢人の両手を無理矢理引っぱがしてじろじろとその部分を見る。真っ黒い茂みに佇むそれは…はっきりいって俺のとは比べもんになんないぞこれ。

「ちょ…本当やめて」
「なんだよいいじゃねーか!裸の付き合いだろー!」
「兄さん顔近過ぎだから…何この体勢…」
「あん?なんだよ?」

目と鼻の先にそびえ立つ賢人のちんこ越しに、その持ち主の顔を見上げてみる。

「ん…?」

なんか心なしか賢人の顔が赤い気がする。あ、風呂ってあちーからな!俺だって顔赤くなってんだろ。
つかそれよりもなによりも、目の前に垂れ下がっていたはずの賢人のちんこが、垂れ下がっていないことに気付いた。

「んな、ちょっとたってる?」

からかってやろうとかそんな気持ちじゃなくて、ただ純粋に聞きたくて首を傾げた。
そしたら賢人は、唇をわなわな震えさせてじとりと俺を見下ろす。

「兄さん…」
「な、なんだよ」
「この体勢がどういう体勢なのか分かってるの?」
「は?なに?」

この体勢?賢人は立ってて俺はイスに座ってて、その賢人の股間のとこに俺の顔がちょーどな位置にあるこの体勢が何だってんだよ。何怒ってんだよ賢人のやつ。

「はぁ……分かってないよね。そんなことだろうと思った」
「なんだよそれ!それとこの体勢に何の関係があんだよ?」

交差する視線は向こうから逸らされて、賢人はもういいよと湯舟にちゃぽんと浸かってしまう。ちっ、なんなんだよマジで。







「つーかお前さっきからなんか隠してるだろ」
「はぁ?別に何も隠してないよ」

俺もさっさと身体を洗って湯舟に入った。え、何一緒に入るのと賢人が目で訴えてたけど、そんなもん俺には通じねー。
賢人は隠し事する時ぎゅっと手を握るクセがあるんだ。つーかその顔見てりゃ分かるっつの。

「いやぜってー嘘だね!お兄ちゃんにはバレバレだぞ!」
「これみよがしに兄ってとこ強調しないでくれる?」
「うるせー俺はお前より1年も長く生きてんだ!何かあんならドンと俺に相談しろ!」

はぁ、とまた大袈裟なため息が風呂場にこだまする。さっきからはぁはぁはぁはぁなんなんだよお前はよー!
ぱしゃんとお湯を賢人の顔にぶっかけてみたら、限りなくお怒りモードの弟は前髪をかきあげながらキッと眉を寄せた。

「なっ、なんだやんのか?!」
「そんなに兄さんが兄の権限を振りかざしたいならいいよ、乗ってあげるよ」
「???」

ぬっと伸びてきた手に身がまえていると、何故か胸にずくんと衝撃が走った。は?なに、乳首?

「っ、な、なにすんだよ」
「僕…、自分以外の人の胸って触ったことないんだよね」

だから兄さん、触らせてくれる?なんて猫撫で声で首を傾げられたら、兄として断るわけにはいかんだろう。……だよな?

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