暑苦しいキミ 02.




「うぉぉぉおおい!」

時間はゆっくり進んで、まだ借り物競争の競技の真っ最中。
わざわざ皆を応援するような元気がオレに残っているはずもなく、白組の陣地のブルーシートの上でねっころがっていたところに、聞き覚えのある暑苦しい声が降ってきた。

「おおぉ起きろーーっ!」
「なっ、何だよ…って…ちょ」

言われながら腕をがっつり掴まれ、無理矢理に起こされた。けだるそうに奴の顔に視線をやると、

「次はキミが借りられる番だよっ明クンっ」

語尾に「♪」が付いているかのような口調で細谷はそう言って、「ハイ立って立って!行くよ!」と急かされるがままにオレは、本日二度目のグラウンドに足を踏み入れることになってしまった。




「はぁっ、は」
「明クンは本当に体力がないねぃ」
「うっ…せーよ……つか、」

さっきから気になってることがある。

「なんだーい明クン?」
「その紙、何て書いてあったんだよ」

そう奴の肩に手を置きながら聞くと、言われた本人は分かりやすく一瞬びくついた。

「え?」
「え?じゃねーだろ」

細谷の真っ正面に回り込んで地べたに座り、太陽を背にして立つ奴を目を細めながら見つめると、奴は見事に目が泳いでいて。

「どんだけ挙動不審」
「あっ!俺実況に戻らなきゃ!放送委員も大変だからさ〜」

白々しく踵(きびす)を返そうとするその足首をぎゅっと握り、「おいっ」と叫ぶと、奴は困ったようにその場にしゃがみ込んで頭をかく。

「な、なんだお前気持ち悪い」
「明クンひどい」

何だか知らないが妙に頬を染め、恥ずかしそうに折り畳まれた紙を差し出された。

その紙には――






『好きな人』



そう書かれていた。

え、ちょ、意味が分からない。


「ちょ、何こ」

れ?と聞こうとした時には、細谷は猛ダッシュで実況席に向かっていて。
それを追い掛けられる体力なんかあるはずないオレは、ただただこの紙を見ながら固まっていた。




---fin---



なんか夏っぽいものが書きたくなって、運動会ネタです。(夏っぽいのか…?)
このあと二人はどうなったのか、またもや気になる感じで終わってしまいました…(*´Д`)/


ここまでお読み下さってありがとうございました!よろしければ、ぽちっと押して頂けると嬉しいです。


次ページからは、キリリクで書かせていただいたこの「暑苦しいキミ」の続編になります!

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