それじゃあ土下座でも
ずっと、ずっとこいつの事を想っていた。…かれこれ何年になるんだろうか。小学校ん時からずっと一緒にいて、俺の隣を歩くのはいつだってこいつだった。
だけど、いつの間にか俺達の周りには沢山の女が集まってくるようになって。
その内にあいつは言い寄ってくる女と片っ端から付き合いだした。
「マリコちゃんと付き合うことにしたから」
最初言われた時は心底驚いたと同時に、ただただ愕然とした。いつまでもあいつに彼女が居ないまま過ごすなんて事がありえない事ってのは頭では分かっていたつもりだったのに、いざ言葉にして聞くと思ったよりショックで。あー、泣いたりもしたっけな、あん時は。
「マリコちゃんと別れた」
「え何でだよ」
「やーなんか好きって言われたから付き合ってみただけだし俺あんま好きじゃなかったみてぇ」
なのに一ヶ月やそこらですぐ別れ、「やっぱお前と居るのが一番ラクだわー」なんて言われてちょっとドキドキしてたのもつかの間、奴はまたすぐに「アイちゃんと付き合うことにした」「アイちゃんと別れた」「ナナコちゃんと付き合(以下略)」「ナナコちゃんと別れ(略)」と次々に付き合っては別れ、付き合っては別れの繰り返し。
こいつ最低だなとか考えてたら、よくよく聞いてみれば全部ことごとく振られてるときた。
振られる程顔と中身のギャップもそんなあるわけじゃねぇし、こいつ普通に良い奴だしなんで振られんだろとかマジで思ってたら、今度は実は好きな人が居るとか言い出すし、はああああぁ?!と思ってそいつに土下座でもなんでもして付き合ってもらえよと言えば、俺の目で土下座してくるし…。
それじゃあ土下座でも 番外編
「…ど、土下座したけど…ってこれマジだかんなふざけた訳じゃねぇぞ?何だ、お前が変なこと言うからちょっとマジでやっちゃったけど…あ、むしろ引いた的な?今まで普通に友達やってたのに何お前きめぇみたいな?…おい何か言えよ…っ」
土下座から正座に足を直し(ちなみにここは外である)、捨てられたネコかお前は!って位に寂しそうな目でじっと見上げてくる。
「っ、おい何か言えって放置プレイはきつすぎんだろコレ」
「ふっ…はははははははっ!」
「ちょ、お前マジ笑ってんじゃねーよコレ俺がどんだけ勇気振り絞ってると思ってんだまさかドッキリとかウソだとか考えてんじゃねーだろうな!?」
なんだこの生物。可愛すぎだ。
そして俺やべぇ今心から幸せすぎる。超ニヤニヤ止まんねぇ。
まさか、まさかこいつの好きな人が自分だなんて思いもしてなかった。
こんな奇跡も、あるもんなんだな。
「っ、おい笑ってねーで何か言えって……っ…!?!?」
だから、さっきから煩いあいつの口を、キスで塞いでやった。
---fin---
あ と が き
本編のつづき。
なんだかいい年こいた男二人が外でこんなんやってたら和みますね(笑)
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