兄の苦難 01.



「おにぃちゃん…?」


父親が再婚しました。
そして相手の女性が連れて来たのは、歳の離れた弟でした。



兄の苦難



わぁ可愛い。血の繋がりのない形だけの弟ですけれど。恐る恐る私を見つめ「お兄ちゃん」なんて、どんなフラグなのでしょうか。


「お兄ちゃんっ」


幼稚園から小学校にあがり、どんどん生意気になっていく愛しい弟。その成長を見守るのが、私の役目です。


「お兄ちゃん、大好き」

「お兄ちゃん、遊んで!」

「また出掛けんのー?」


そうやってお兄ちゃんの事を気にかけてくれて、何かあればまず「お兄ちゃん」と言ってくれて…。なのに…


「…なに」

「勝手に部屋に入ってくんなよ!」

「は?」


あぁ、いつの間にこんな反抗期。これくらいの時期、家族の事がどんどんうざったくなってくるもんね、反抗期なんだよね、お兄ちゃんは悲しいです。


「……はぁ」

「どうしたのですか?」

「あっ、兄貴には関係ねぇだろ」


兄貴…。そうやって私が、がっくり肩を落としても、何一つ気にする様子のない我が弟。




先日、私の行き着けのゲイバーでこの事を相談したら、「美味しいシチュだなおい」「そして美味しく頂くんですね分かります」「って事でとりあえず食っちゃえばいいんじゃね?」と皆に適当な事を言われてしまったのですが、唯一マスターだけはきちんと話を聞いてくれていたようで、


「今までのアナタの話を聞く限り、多分弟チャンはアナタの事、そういう意味で気になってると思うわよぉ」

「…っえ…そう、でしょうか…?」

「あらぁ!アタシの勘は当たるのよぉ」


とウインク混じりに背中を押されたので、よし今日は頑張って話し掛けてみましょう!と意気込んで帰宅しました。




「な、なぁ兄貴…」

「はい?」

「兄貴って、…その…好きな人とか……いんの?」


…マスター。やっぱりあなたの勘は当たるみたいです。



-E N D-



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