生真面目チョコレイト 番外編



*こちらは短編小説の「生真面目チョコレイト」の番外編です。是非本編からどうぞ*



俺の好きな人は、勤勉で真面目な反面ちょっと普通より抜けてる部分が多い。
普通の高校生が知らないような知識はすっげー知ってるくせに、普通の高校生なら興味を持って当然のことを知らなかったりする。例えばそう……ABCとかな。

『今日、両親と妹が旅行に行くので家に来ないか』

そんなこと言って俺を誘うくせに、その実文面以上の意味を考えはしていない、そんな人。まぁそんなところも好きなんだけどさ。

付き合ってもう結構経つ。こないだやっとベロチューまでこぎつけた俺としては……こんな絶好の機会、逃すわけにはいかないだろ。



生真面目チョコレイト 番外編



「泊まっ…え?」
「俺てっきりそのつもりで来たんだけど……ダメ?」

学校から帰ってがっつり着替えとかが入った大荷物を片手にソッコー家にお邪魔しに参上したら、家の主はやたら驚いたように目をぱちくりと開けた。

「も、勿論構わないが…親御さんにはきちんと」
「言ったよ、守山んち泊まるって」

そうか、ならいいんだが、なんて淡々と返してくるその顔は、俺の心の深いところにある欲望なんて知る由もない、そんなしれっとした顔だった。



守山誠。俺の好きな人。恋人。バレンタインに告ってホワイトデーにまさかのオッケーが貰え、めでたく付き合うことになって約半年。
名前に見合った、真面目で嘘のない真っ直ぐしたところが俺はすごく好きだ。

最近、俺がやたら近くに寄ったり耳元で劣情を揺さぶるような事を囁くと、分かりやすく動揺するということを知った。それは付き合った当初にはなかったことで、きっと守山の中にもそういう…俺と似たような気持ち、そういうことをシたいって気持ちが少なからず存在し始めたってことなんだと思う。すげー嬉しい。



「…?どうした」

ローテーブルに向かい合って課題にペンを走らながら、というか最初から俺は勉強に気なんて入ってなかったわけだけど、ふとそんな事を考えてじーっと守山を見ていたら……俺からの熱い視線に気付いたらしい守山は不思議そうに首を傾げてきた。

「ん?なんでもないよ」

へらへらっと笑って視線を下げる。
あ、そうだいいこと思い付いた。

「っな、そういやこの前話してた雑誌持って来たんだけどさ〜…」

言いながらでっかいカバンをごそごそ探って、興味津々に俺の動きを目で追う守山を確認した俺は、タイミングを合わせてころんとカバンからコンドームの袋を落としてみた。

「…?なにか落ちたが」
「ん〜?あ〜…悪い、拾っといてくれる?」

面倒くさがる訳でもなくゆっくり俺の傍らに移動した守山は、テーブルの足辺りに転がったコンドームの袋を手に取る。
あ〜…どんな反応すんだろ。まさか知らないってことはないだろうし、何で持ってるんだとか、新品の箱じゃなくて袋ってとこに疑問つか嫉妬したりするんだろうか。まぁ…俺だってゴム買ったのなんか初めてだし、とりあえず開けてみたいって思うのは普通の考えだろうし?付ける練習した…とか、さ、絶対言わないけど。

「高橋くん、これは…」
「ん〜…?」

袋を掲げながらどんどん怪訝な表情に変わっていくあいつを、ドキドキしながら見つめる。

「なんだ?」
「え?」

キョトンとした顔。あぁ、まじか。俺はぽかんとしながら、でもちょっと嬉しくて心が勝手に満たされていくのを感じながら、にんまり口角を上げた。

「コレ、見たの初めて?」

こくんと頷く守山。可愛い。あーやべ、このまま押し倒してじゃあ使ってみる?とか聞きてぇ。そしたらどんな反応をするんだろうか。その涼しい顔が一瞬で真っ赤になる様を見たい。その涼しい顔の下にある細い身体を、隅々まで見て知って触りたい。

「な、なんなのだそれは……」
「ん?ゴムだよ、コンドーム」

ゴムという単語に無反応だった為、コンドームと言い直してみれば、あぁほらやっぱり。守山の顔にじわじわと羞恥の表情が浮かんでいく。

「なっ…コ、コン…なん…」

一気に困惑しながらおろおろしだす守山の腕を引っつかんで、ぐいとこちらに引き寄せた。

「そりゃ…まぁね」
「えっ、た、たかは…んっ!」

もう駄目だ。守山の匂いが染みついた密室で、この家には今日俺達二人だけしかいなくて、ゴム片手に赤面する守山を見て……この気持ちを抑えろって方が無理だろ。

半ば強引に奪った唇は想像に反することなく熱くて、唇を割るように舌でそこをまさぐれば、たどたどしくうっすらその扉が開かれて。
潜り込ませた舌を容赦なく守山のそれと絡め合わせながら、必死に応じる守山の表情を薄目を開けて見てしまえば…もう止められなかった。

「んっ…んん…っ…はぁ…は」

ゆっくり離れたお互いの口から銀色の糸が引くのが見えて、やけに煽情的なその画に輪を掛けて身体が熱くなっていく。
あー…やばい、どうしよ、駄目かな……あ〜……守山はどうなんだろ、制服のスラックス越しに見る限り勃ってはいるっぽいし、その息の上がったなんとも色っぽい顔もほんと、まずいな…

「…!!っな、わ…っ!」

気付けば自然に守山の股間に手が伸びていた。そっと触れたそこはしっかりと質量を増しているのが分かって、初めてリアルに感じる他人の温かさにどくんと身体の芯から熱が溜まるのが分かった。

「な……触りたい。だめ?」

伺うように目を向ければ、恥ずかしいのか視線をずっと伏せたままの守山は怖ず怖ずと頭を横に振った。

「でっ…でも、あの僕」
「俺さ…こーゆーことすんの初めてだし、したいと思ったのもお前だけだよ。本当に」
「高橋、くん…」

多分今一番欲しいであろう言葉を並べていく。徐々に安心したように顔を緩ませる守山に微笑み、しっかり目を合わせながら囁く。

「好きだよ、誠」
「…!!」

ぼっと火が点いたみたいに顔を赤くする守山の頭をそっと撫でて、耳元に舌を這わす。

「ひゃっ…!んっ」
「な……俺のことも名前で呼んでよ…」

低く囁けば、もごもごと遠慮がちにそ、そ、颯祐…?なんて返ってきて。
堪らず貪るようなキスをした。



* * *



「た、た、た、たかは」
「颯祐」
「そ、そうすけ…く、ん」
「“くん”は要らない」

守山のベッドで二人寄り添いながら、やっと目が覚めた守山の頭を優しく撫でる。

あのあと、雰囲気に流されるまま守山の服に手をかけたところで……またもやあいつは気を失ってしまった。
すっっっごい生殺しの状態のままとりあえずベッドに寝かせて、いっそこのままこの服を全部剥いで体中に奉仕したいって気持ちを必死に必死に堪えながら、隣で眠る愛しいこの人を穴が空くほど眺めていた。

「たかは…そっ颯祐…」
「ん…?」

申し訳なさそうに眉を下げて、今にも泣きそうな目がこちらに向く。
あー…可愛い。罪悪感に苛まれてるしょぼくれた顔ってそそるよな〜…。俺はこのままさっきの続きしたっていいんだけど…というかむしろ……

「申し訳ない…ま、またもや気を失うとは…」
「いーよ。まだ夜はこれからだし」

含みのある顔で笑えば、面食らったかのように目を丸くする守山。
だって今日はお泊りだぜ?絶好のチャンスじゃんか。ゆっくりゆっくり、俺に慣れて欲しいよ。今すぐ今日絶対なんて言わないから、俺とそーゆーことしても最後まで気を失うことがないように、俺に慣れて欲しいんだ。

「それとも誠は、あんまこーゆーこと、したくない?」

責めるような口調にならないように気を遣いながら、優しく問い掛ける。

「し、したい」

そっか、したいんだ。ちゃんとしたいって、思ってくれてんのな。

「そっか。俺も」

へへっと笑えば、つられて守山も安心したような笑みを浮かべる。
二人の間に漂う付き合いたてほやほやみたいな甘い空気を存分に感じながら、触れるだけの軽いキスを落とす。

「つ、次は気をもっとしっかり持とうと思う。絶対倒れたりしないように、するから…」

まるで必死に縋るように見つめられて、胸がきゅうぅっと締め付けられるみたいに鳴る。
そんなに思い詰めなくていーのに。そんなとこも可愛いって、前言ったのにな。

「…?わ、笑…?」
「ん?ん、そーゆーとこも好きだからさ。そんな思い詰めないでよ」

あやすように前髪をそっと撫でて、額にちゅっと口づける。

「ほ、本当に…」

まだ不安そうに犬耳をしょんぼり垂らす守山。ん〜…どうしたものか。あ、

「じゃあさ、あとで一緒に風呂入ろーぜ?」

〜ッ?!と分かりやすく顔を真っ赤にした守山にニシシと笑って、不意打ちに軽くキスをした。

「やだ?」

探るように聞けば、ほら。

「や、じゃない…」

耳まで赤くしながらそんな言葉が返ってくる。

ふは、今から楽しみだ。
今度こそ気ぃ失わせないようにしなきゃなと意気込んで、包み込むように誠の体を抱きしめた。



---fin---



ついに…ついに二人の名前が明かされました!気を失ってばかりの守山くんですが、次こそは…次こそはCまで進んでくれることを、高橋くんと共に願ってやみません。あのあとお風呂でどうなったのか気になりますな(〃Д〃)ハァハァ
寿鈴様、雷茅様、リクエストありがとうございました!



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