番外篇 02.




「あぁ…ああああ…」

「?にぃ、どしたの?」


純真無垢な優の水着姿を目の前に、今にも倒れてしまいそうな(出来れば優を押し倒したい)俺は、ジャンボプールの更衣室脇目下、一人悶えていた。


「変なにぃ!早く泳ごうよー」


無造作に俺の手を握り嬉々としてプールサイドへ向かう。
あぁ。これ周りからは「仲が良い兄弟」にしか見えてないんだろうなぁ…。ま、それが当たり前で、そうじゃなきゃ困るんだけど。


「きゃはっ!にぃっ!にーいっ!」


流れるプールで浮輪にスポッとはまった優に水を掛けたり掛けられたり。(ついでに精子も掛けたり掛けられたりしたい)
終始嬉しそうにはしゃぐ優の姿を見て、この笑顔は俺だけのものだ、なんて思って一人でニヤニヤする。


そんな時だった。


「あー!ゆーくんだー!!」


後ろからそんな声が聞こえ、振り向くとそこには幼女が2人。…言い換えよう、優のクラスメイトであろう女子が2人居た。


「あ、かなちゃん、ゆかちゃん!」

「ゆーくん!久しぶりだねぇー!」

「うんっ、久しぶりっ!」


…このツインテール幼女の方、もしや優の事が好きなのか?何かめちゃめちゃ嬉しそうに話してるけど…んん…。

そんな醜い嫉妬が顔に出ちゃいそうだったので、自分で自分の太股を思いっ切りつねって精神を無にした後、お得意の営業スマイルで


「優のお友達かなー?こんにちは!」

「こんにちはっ!おおさきかなっていいますっ!」

「……こんにちは」


俺の挨拶に礼儀正しく応えたショートカット幼女かなちゃんはまぁ良いとしよう。
問題はやはりこの、俺には明らかに態度が悪いツインテール幼女だ。


「…ねぇゆーくん!ゆか達と遊ばないっ?」

「えぇー…でも僕、にぃと来てるから…」

「えーそんなの関係ないじゃんっ!ゆか達と遊ぼーよっ!」


…ほんっとにこのガキャァ…。
ツインテール幼女ゆかちゃんは、浮輪につかまったままの優に馴れ馴れしく近付いて、馴れ馴れしく優の肩を掴んでゆさゆさ揺らしている。本当に馴れ馴れしいな。

一方の優は、困り果てた顔で俺に助け舟を求めていた。


「ねーってば!ゆーくん!」

「え…でも…僕…」


普通は、兄として「遊んで来な、お兄ちゃん見ててあげるから」とか言うのが正しいんだろうな、確実に。
でも俺はこの時、(精神を無にしたはずだが)冷静じゃなかったらしい。


「ゆかちゃんだっけ?優、困ってるみたいだぞ?」


と、大人げなく(本ー当に大人げない)ゆかちゃんに突っ掛かってしまった。


「そんな事ないもんっ!ねっ!ゆーくんっ!」


ゆかちゃんは更に優にベッタリくっつくと、俺にあっかんべーと舌を出した。
本当に俺も駄目だな、心が狭すぎる。優のクラスメイトの子にまでこんな嫉妬するなんて…。優もそう思ってるだろうな、と肩を落としたその時だった。


「…もぅ!僕はにぃとプール来たの!ゆかちゃんとは遊ばないっ!」


優はそう言い放って、浮輪から出てぎゅうっと俺に抱き着いてきた。
…キュンキュンしちゃったぞ優。ついでに俺の下半身も今、キュンキュンしてる。


「ぶぅー…。もういいもんっ!かな、行こっ!」

「う、うん。じゃ、ゆーくんまたね!お兄さんもまた!」


プリプリしながらプールから上がるゆかちゃんと、申し訳なさそうに着いて行くかなちゃんだった。


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