女装少年
僕は人に言えない趣味を持っている。
それは、女のコの格好をして街に出ること。
「ね、キミ可愛いね?ちょっとオニーサンと遊ぼーよ」
知り合いにバレたことはおろか、化粧の上達した今じゃあナンパされるのも珍しくはない。
今時珍しいロン毛のギャル男が、顔をニヤつかせながら存分にいやらしい眼差しを浴びせてくる。うーん。ギャル男に興味はないんだよねぇ。
「……やーだよっ」
べ、と舌を出してその場から逃げ去った。
危ない目に遭わないように普段から足腰だけは鍛えててよかった、なんて、後ろから聞こえる憤慨したギャル男の声がどんどん遠くなるのを聞きながら思う。
ま、あんまりやり過ぎて筋肉がつくのはイヤだからほどほどにだけど。でも女装して襲われましたじゃハナシになんないからね。
漸くと速度をゆっくりに落とし、乱れたスカートの後ろ裾をちょんと引っ張って直す。
「…んー」
今日は電車にでも乗ろっかな!
そう決断した僕は気持ちも改め、駅までの道を早歩きで進んだ。
女装少年
日曜日の真っ昼間。
黄緑色の電車は若いカップルや家族連れで賑わっていた。
ひとつの駅を経由する度に、沢山の人が降りて沢山の人が乗ってくる。
僕はドアの端に立って何とは無しに外の景色を眺めながら、どこの駅で降りようかとぼんやり考えていた。ら、
「…?」
背後にぬっと影が伸びてきて、それは僕の真後ろにぴったりくっついてきた。
「……」
満員電車ってほど混んでるわけでもないのになんでわざわざくっついてくんだよ…と考えたところで、ひとつの仮説が浮かびあがった僕は思わず息をのんだ。
ゆっくり俯いて、ドアに手をかけてじっと後ろに意識を集中する。
――あ、やっぱり。
何分も経たないうちに臀部に伸びてきた見知らぬ手は、遠慮がちに、あくまで自然を装って双丘を撫でてくる。
電車が揺れる度にすりすりと布越しにお尻を触られる。今日穿いてるスカートは生地が薄いから感触がよりダイレクトに伝わってきて、こんなことイケナイと思う反面、身体は素直に劣情を煽られてしまう。
「……っ、」
ん〜どうしよ。
痴漢されたのなんか初めてだし、なんか変な気分になりつつはあるけど…相手がキモイ奴とかだったらテンション下がるしな……
頭の中で冷静に次の場面をシミュレーションする。
――と、電車は短いトンネルへ差し掛かり、一瞬で外の景色が遮断されて代わりにドアのガラスに映った背後の人物の姿が見えた。
うわっ。
なんだ、めっちゃ格好いーじゃん。
心に掛けていたリミッターが音を立てて外れていく。
僕のお尻をまさぐる手も少しずつ大胆なものに変わって、形を確かめるように指の腹でぐにぐにと揉まれていた。
そのまま暫くされるがままじっとしていると、耳元にはぁ…と熱い吐息がかかってゾクリとする。あ、やばい。完全に今ので勃っちゃった。
スカートを押し上げて不自然な形になってしまっている前を隠すように、カバンをそっと股間の部分にあてる。
その時、小さなカバンの硬い部分がソコにあたって、思わぬ刺激に声がでそうになった。やばい、男だってバレちゃう…!
「…ふ……っ」
必死に声を殺す僕の仕種に気付いたのか、お兄さんはぴたりと身体をくっつけて耳の縁をペロリと舐めてきた。
「っ…!」
「感じてるの?可愛いね…」
低く囁かれる声は酷く甘くて、僕の理性をあっという間に崩していく。
我慢できなくなった僕はくるりと半回転して、ぎゅっと彼に抱き着いた。周りから見たらただのバカップルにしか映らないだろう。
お兄さんの胸に顔を埋めて、小さく「次で降りよ…?」と言えば、ゴクリと喉の鳴る音が聞こえた。
***
「ねぇ、まさかまだボクが女の子だと思ってないよね…?」
僕達はラブホテルのベッドの上にいた。
シャワーなんてまどろっこしいものは省いて早急にベッドへお兄さんを誘った僕は、彼の上に跨がってニコリとそう見下ろす。
「…え、…お、男の子…?」
半信半疑。いや、全然信じていない顔してるな。
声は高い方ではあるけど、決して女声ではないのに。
大学生然としたスラリと手足の長いイケメンは、僕の下でキョトンと小首を傾げる。
「確認してみる?…ほら、触って」
相手の手をとって股間にぐっと押し付ける。性器の形が分かるようにむりやり握らせてやると、お兄さんはカッと顔を赤くした。
「…ぅわ、まじ、え、すご……っ」
「騙されちゃったねぇ」
ニィ、と笑みを浮かべる。
と同時に下半身にごり、と何かが当たる感触がした。
なんだこの人。アリなんじゃん。
「ふふっ、ボク男の子なのに…おちんちん握らされて勃つなんてお兄さん変態だねぇ…」
「な"っ……」
「でもボクもそんなお兄さん見てたらコーフンしてきちゃった。ね、ホラ」
馬乗りになりながらスカートを捲り、女性用のレースのショーツからはみ出ている性器を顎で示してにっこり笑ってみせる。
恐らくノンケであるお兄さんは興味津々に僕の股間を凝視していたけど、腰を揺らして熱っぽい視線を投げればすぐに誘われるようにして下着へと手がかかった。
「…はぁ…んぅ、も、お兄さん、直接触ってよ…」
熱い息を吐きながらショーツを太股までおろしてやると、お兄さんは鼻息荒くソコをまさぐりだす。
「んっ、んっ…お兄さんのもすっごい硬くなってるね…舐めていい?」
僕の下ではしたなく勃起しているソコを、やらしい手付きで撫で回す。
「うっ、うん…舐めて」
欲情の満ちる声と瞳に、僕は夢中になってお兄さんの立派なイチモツを頬張った。
ぢゅぶ、ぢゅ、ちゅ、くちゅ、ちゅっ
わざと音を余計に立てて、煽るように時折上目遣いで相手を見つめながら口淫を深くする。
ね、オニーサン。僕、そこらの女の子より上手いでしょ?
「っあ…、で、出そ」
切羽詰まった声に、一旦動きを止めて口を離す。
「んぱっ…、じゃあほら、後ろ向いて?」
「え…え?何、キミそっち…」
「ふふ、そうだよ?ボクのおちんちん、お兄さんの可愛い穴に早く入りたがってる…」
ほら、と屹立した自らのソレを握って左右に揺らす。赤く熟れて筋の張るその棒の先からはぬらぬらとやらしい糸が引いていた。
「ちょ待っ…俺シたこと無っ…」
「後ろは初めてなんだ?うん、大丈夫、優しくしてあげる……」
チューブから粘っこいローションをぢゅーぢゅー出しながら、突き出させた形の良いお尻に顔をぴたりとつける。
それからローションを塗した指で双丘の間を滑らせるように往復した。
「…ひっ!」
「だーいじょぶだよ。ボクに任せて?」
優しく囁き後ろから身体を寄せて、お兄さんの耳穴をぺろりと舐める。
電車の時とはまるで正反対な体勢にゾクリと背徳心が芽生えた。
ふふ、みんな絶対僕がネコだと勘違いするからなぁ、そうやって驚く人を組み敷くのってほんと…ゾクゾクする。
「ん"っん"…っ!」
「息吐いて…そう、もっと力抜いて。前も弄ってあげるから…膝立てられる?」
言われるがままに膝を立てて尻を突き出すお兄さん。萎えかかっているそれを握って何度か扱いてやると、あっという間に角度をつけて涙を零しだす。
「ぁ…っ、う"っ……ん"…っ!」
「どう?痛くはないでしょ?」
前も弄りながら器用に後ろをほぐしていく。指が三本ほど入ったところで苦しそうに呻くお兄さんの耳でそう尋ね、こくこくと頷かれたのを確認して最後にぐいっと中を掻き混ぜてから指を引き抜いた。
「…ん"ん…っ、はぁ…っは…」
「おちんちん、いれていい…?」
一応聞いて、でも返事も聞かずに耳穴をくちゅりと舐めてからサッと自分の猛ったそれを穴に押し当てる。
「…ぅえ…っ!あっ…待っ…!」
「待たないよ…もう僕限界だもん…力抜いて…」
「ぁああ"っ…あっ…あっ!」
「お兄さんエロいね…前も後ろもぐっちゃぐちゃだよ…」
締まりの良いノンケのケツは最高だった。
突っ込まれることに慣れてない喘ぎ方とか、それでもちんこや乳首を弄ったり耳なんか舐めるとたまんなそうに腰揺らしたりするとことか、ほんといいな、この人……
「っ…ん"っ…あぁっ…あっ」
「やばい僕…っも出そう…っ…は…っ出していい?ナカに出すよ…?」
上擦った声で受諾の言葉が返ってきて、僕は微かに微笑んでから律動を小刻みに速くした。
* * *
「スカートこんなになっちゃった…」
情事を終え、シャワーを浴び、備え付けのバスローブに身を包んで、精液とカウパーでしっかりカピカピになったスカートを掲げて困ったように笑った。
「えっと…弁償するよ、俺」
「ん〜?」
べつにそーゆーつもりで言ったんじゃないけど。あ、でもそうとられても仕方ないか。
僕はにんまりと含みのある笑顔で、お兄さんに擦り寄る。
「ボク、またこれ履いて帰るよ?…ふ、ちょっとエロいよね?」
しっかり化粧を直した目をぱちくりとさせ、お兄さんを煽るように下から覗き込む。
「エロいっつかそれは……」
「なぁに?これで電車乗ったらまたボク痴漢されちゃうかなぁ…?」
にっこり微笑むと、お兄さんは何かに憑かれたようにガッと僕の肩を掴む。
「おっ、送る…送らせて。あと、よかったら、その…」
真剣に、付き合ってくれないか――
欲しかった言葉を貰った僕は、この日一番の笑顔でコクンとひとつ、頷いた。
ラブホテルから肩を寄せ合いながら出た僕達が、まさか二人共男の子だなんて……ホテルの受付さんも勿論、すれ違っていく誰一人として思わないだろうなぁ。
「っね?」
ん?と首を傾げる彼氏の頬に、とびっきりの甘いキスを捧げた。
--end------------
【あとがき】
女装男子高生が電車で痴漢されて、男がわふわふしてたら実は女装男子は攻めで逆に奪われちゃうとか。
ってな感じで承りました!
見た目ゆるふわ系の可愛い男の娘が『締まりのいいノンケのケツは最高』とかゲスい言葉を使ってるのが個人的には好きです。うふうふ痴漢プレイも大好物!
お題提供ありがとうございました!
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