あにおとで乙女な弟


「ちょ…ちょっと待て亜樹…!」
「えぇ〜なんで〜?お兄ちゃんがコレ着たら絶対良いと思うんだぁ〜!」
「ちょっ………そんなキラキラした目で見ないでくれ…」

へなへなと片手をあげて諦めにも似たため息をつく。
目の前にいる弟の好奇心と期待のたっぷりこもった瞳に、最初から俺が勝てるはずもないのだ。



あにおとで乙女な弟



俺と亜樹は三歳離れた血を分けた兄弟でもあり、恋人同士でもある。
良くいえば大人っぽいのだろうが…基本老けて見える俺と、愛らしくて可愛い過ぎるが故に幼く見られがちな亜樹。二人並ぶと下手したら親子にすらみえかねない。

「ね〜え〜……お兄ちゃん?」

…んまぁ亜樹が幼くみえるのは、彼の趣味にもおそらく関係があるのだろうけれども。


小柄で華奢な、とても高校生にはみえないなりをしている亜樹は、生まれ持つ童顔と高めの声と愛嬌と……もう一つ、とっても可愛い趣味をもっている。

「せっかくお兄ちゃんのために縫ったのに…着て…くれないの…?」

フリフリがたくさんついた水色のメイド服もどきを眼下にチラつかせながら、甘えたような声で見上げられてうっ…と息がつまる。お兄ちゃん亜樹のその目に弱いんだぞ…!

「わ、わかったわかった着る!着るから…!」

狼狽えながらも了承すれば、途端にパアァッと花が舞うような明るいオーラを放つ亜樹。くっそ可愛い…!

「それじゃあハイ!着替えてきてねっ!」

にこにこ顔でメイド服を手渡され、もう引くに引けず俺はしぶしぶ着替えるために部屋を出るしかなかった。




「ちょっ…と…コレは……」

隣の部屋でメイド服に身を包んだ俺は、全身鏡に自らを映しながら冷や汗を滲ませていた。まるで似合ってない。

亜樹は可愛いものが大好きだ。
ぬいぐるみやファンシーな小物、甘いお菓子などなど…おおよそ女子みたいな趣向、いわゆる乙女系男子とかいわれる趣味の持ち主だった。

その趣味がいよいよ裁縫にまで及び、こうして俺のためにメイド服まで縫ってくれるというのはまぁ嬉しいような複雑なような……

「いやでもこれはナイだろ……」

ぽつりと言い肩を落とす。
二十歳を迎えた成人男性、ともすれば三十代にも見えかねない俺がこんなメイド服に身を包んだところで、可愛くもなんともないただ気持ちが悪いだけだ。
ましてや俺はゴツくはないが華奢でもなく、いやむしろどこからどうみても男以外の何者でもない容姿をしているからな……これを亜樹が着るならピッタリで多分相当似合いそうだが…化粧なんかしちゃったら女の子に見えそうだろうに……なんでこれ俺が着てんの……

「おにーちゃーん!着ーたー?」

期待に満ちる声が隣からして、今行くよと返事をして覚悟を決める。しょうがない。亜樹が着てって言うんだからしょうがないんだ…!





「お兄ちゃん…!か、わ、い、い〜…!」

部屋に現れた水色メイドの兄を見て、亜樹はリラ○クマを見る時と同じ目で俺に抱き着いてきた。

「か、可愛いか…?」
「うんっ!とってもとっても可愛いよ!お兄ちゃん!チュー!」

ハローキテ○を愛でる時と同じ柔らかいうっとりとした表情を向けたかと思えば、唇を突き出して目を閉じだす俺の可愛い恋人。

なんか満更でもないような浮かれた気分になった俺は、目の前の愛おしい唇にちゅ、と優しい口付けを落とした。

「んっ…お兄ちゃん…」

ねだるような声色に下半身が疼く。
そっと開かれた口内に舌を差し入れ、そこに待ち受けている亜樹のピンク色をした小さな舌と絡ませる。

「…んっ…ふ…んぅ…っ」

肉厚のそれを擦り付けあい、唾液を交換して、ゆっくりと愛を確かめ合う。

自分より一回り小さな身体をぐっと引き寄せて、服の中に手を入れそのすべらかな背中を性的な意図を持って撫でる。

「んっ…お兄ちゃ……」

亜樹はトロンとした目で、そして期待に満ちる眼差しを向けてくる。

「いいか…?亜樹…」
「うん…っ」

目を細め、俺は自分が今メイド姿だということも忘れて、弟をお姫様抱っこで抱えながら寝室へと向かった。



***



「ねぇ、お兄ちゃん……」
「ん〜?」

ベッドで腕を亜樹の頭に貸しながらのまどろみの時間。
俺の腕にすりすりと頬を当てまるでネコのように擦り寄りながら、甘ったるい声で恋人はこう言い放った。

「フリフリのスカートはいてるお兄ちゃんに襲われるの…悪くなかった…っ」

えへへ、とはにかむ亜樹を、俺は至極引き攣った笑顔で見つめていたことだろう。



--end------------





【あとがき】

『あにおとで乙女な弟』
ちょっとコレもしかしたらニュアンスが違っちゃってるかな…?とドキドキしております><;
お題提供ありがとうございました!

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