身長の大きい子×身長が大きくなりたい子


オレの日課。

「ん〜……」

それは毎日学校から帰る前にスーパーに寄って、牛乳を買うコト。…もちろん自分のために。

今日も近所のスーパーで、ズラリと並んでいる青色のパッケージを見比べながら何が1番効果が高いのかと一人悩んでいた。

「…今日はこっちのやつにしてみっかな…」

しばらくして、よく買う『お買い得品』ではなく、ちょいお高めの牛乳を手に取ったその時。

「…特濃……なんかエロいな」

頭上にムカツク低音が響いた。

「な"っ…おーまーえーな〜…!!」

と同時に、オレの頭にかかる程よい重み。その正体はそいつの顎で、そこから発されている淡々とした声がオレのむかつきポイントをじくじくとえぐってきやがる。

「…なんだ」
「なんだじゃねーよ!早くこの顎!どけろっ!」

珍しく素直に一歩下がった京介は、振り向き様に精一杯の睨みをきかせるオレをせせら笑う。

「紘、まだ牛乳なんて飲んでたのか」
「〜…ッ!うるせーよ!お前なんかにオレの気持ちが分かってたまるか!」

1メートル90センチ。
それはオレの身長より40センチほど高く、こいつの顔を見るのにオレは毎度首を痛める羽目になる。まったく忌ま忌ましいヤツだ。

「…まぁ、分からないな」
「〜…ッ!この巨人っ!」

ただでさえコンプレックスである低い身長を無条件で際立たせる京介の足に妬みのこもった蹴りを入れて、オレは巨人から逃げるようにレジへと向かった。



身長の大きい子×身長が大きくなりたい子



「紘、どうやったら身長が伸びるのか……真面目に教えてやろうか」

昼休み、自動販売機で買ったパックのバナナミルクをじゅーじゅー飲みながら席でソシャゲに勤しむオレに、大きな大きな影が落ちた。

「……はっ、どーせまたテキトーなこと言っておちょくるつもりだろ」

京介なんぞに目もくれずスマホを弄くりながら、投げやりに返す。

「どうだろうな?…まぁ、俺はこの方法で背がここまで伸びたんだが……」

隣の空いている椅子に腰をおろした巨人は、机に肘をついてニタリとオレを見つめてくる。

こいつの言うことはアテにならん。いつもいつもチビだの小さいだのミクロだの可愛いだのとオレをおちょくって楽しむのが趣味らしいからな。

…でも、

「一応聞いてやんよ、なに?」

図らずも京介は実際背が高いのだ。
実話に基づく体験談なら、聞いといても損はないだろう。

「そうか。じゃあ放課後俺の家に来い」
「…今教えろよこのどケチ!」

ふ、と京介は不適な笑みを浮かべた。



***



「…………………は?」

放課後、仕方なしに京介の家まで足を運んだオレは、部屋主の口から飛び出たとんでもない言葉に固まる羽目になる。

「性行為。知らないのか?セックスだよ、セックス」

京介は指でナニを握るポーズをとって、それを上下に扱く仕種を見せた。
いやいやいやいや!こいつ頭おかしいだろ!

「〜…っ帰る!お前の戯れ事に付き合うくらいならやっぱいつも通り大人しく牛乳飲んどきゃよかったわ!」

吐き捨てて立ち上がろうとするオレの腕を掴んだ京介の顔は、恐ろしく真面目そのものだった。

「紘、行くな」
「っはあぁ?!」
「俺とヤれば身長伸びるぞ」
「…根拠もなんもねーだろ!」
「やってみなければわからない」
「……でも!」
「もしかしたら本当に背が伸びるかも知れないのに、その機会をお前はみすみす逃すのか?」
「う"っ……」

痛いところをつかれ押し黙る。今思えば完全にバカである。
その隙に腕をガッと引かれ、体勢を崩したオレは京介に抱き留められるような形で覆い隠さった。

「わ、わりぃ」
「……いや」

ぐ、と京介の腕の力がこもる。
体格差もここまでくると笑えてくるよな。でももし京介に本気で掴みかかられたりしたら、オレ成す術ねぇじゃんと一瞬頭の端によぎった。

「…ちょ、いい加減離せよ」
「嫌だ」

悪寒が身体中を電撃のように走る。
え、なんかコレもしかしてマズイ展開…?

「ちょっ京介?!」
「…紘、俺に…させてくれ」

うんって言うまで離さない。と言われてこめられた腕の力は、はるかにオレの持ってる筋力より上で…一気に恐怖が押し寄せてくる。

「な、京介…なに、怖ぇよ、お前…」

上擦った声で弱々しく言えば、案外サッと身体を離してくれた京介はどこか緊張感のこもる眼差しを向けてきた。

「悪い……怖がらせるつもりはなかったんだ」

しょんぼり。
そんな形容詞が似合う眉の下がった表情を見ていたら、さっきまで身体中を支配していた恐怖がウソのように消えていった。…単純な脳みそだなと我ながらいっそ感心する。

「京介、もーいいよ」

大丈夫だぞということを示すため、極めて優しい口調になるように努めた。
俯いていた京介はゆっくり首をもたげ、様子を窺うように視線を合わせてくる。

「……いいのか」
「? うん?」

言うや否や、京介の表情筋がみるみるうちに活動を開始し、あっという間に普段通りの小生意気でいけ好かない顔に戻る。

「じゃあ………ヤるぞ」
「っは?!」

そっちの『いい』じゃねーよバカ!
声を大にして言いたかったが、自分よりでかい男に押し倒されて唇を塞がれてしまっては、なんとも言葉にならない。っつか!!

「ん"ん"〜っ!」

何をしとんじゃ京介のヤロー!!
大きな背中を遠慮なしにバンバン叩いても唇は離れる気配をみせない。
そのうち暴れていたオレの両腕は、呆気なく京介の片手によって上にひとまとめに縫いとめられてしまう。ちょ、ちょ…!

「ん"っ…んんぅ……!」

鼻から息がぬける。
つられるように、自分の身体からも力がぬけていくのが分かった。

「…っ…はっ…は……な…に…キス…とか…してんだ…!」

両腕は拘束されたままだが漸く唇が離され、オレは乱れた息を整えながら京介を見上げる。

「うちに普通のAVはないからな、キスでもしたら勃起するだろうと…それにセックスはキスから始まるものだろう……なんだ、ほら…勃ってるじゃないか」

さわさわと股間を撫でられた。

「……ま、まじですんの…?」
「するよ。紘の身長の為にな」

自信に満ち溢れた微笑みを浮かべる友人を、ははは…と渇いた笑いでごまかした。

「…そんな顔しても駄目だ。紘、あまり俺を煽るな」
「は…はっ?!煽…?意味分か…んむっ!」

再び口を塞がれて、あとはただただ……

「紘……紘…」

譫言のようにオレの名前を呼ぶ京介にしがみつくことしか、出来なかった。

「……紘………好………だ……」



***



「やったじゃないか」
「いやいや伸びたつっても0.2センチだかんな!?たった2ミリだぞ!?これ靴下でどーとでもなんだろ!」
「いやいや、俺とセックスしたおかげだろう」
「〜…ッ!」



--end------------





【あとがき】

『身長の大きい子×身長が大きくなりたい子』
流され受けは可愛いですね。したたかに紘くんを狙う京介くん…これからも何かと理由をつけてはいかがわしいこととかしたらいいとおもいます。
京介くんの気持ちに紘くんが気付く日は果たしてくるのか……!
お題提供ありがとうございました!

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