act.61




「――……っ!」

俺の質問に、あ〜やっぱそのことだよな…とやや口ごもる先輩からもらった答えは、自分の中で考えうる可能性のどの答えとも違っていた。

ボッと顔が熱を帯びる。
手の平でそっと押さえただけでも発熱したかのように熱くなっているのがわかって、心の中で苦笑った。

『あ〜も、こんなこと言うつもりなかったのに……すげぇ女々しいな、俺』

先輩の顔が見れないのがすごく残念だ。
今、貴方の顔が見たいのに。

どんな表情で、どんな仕種をしながら――


『今までさ、中村クン“から”の連絡…ってないじゃん?だから……その…寂…しくて、さ』


――こんな言葉を言ってくれたんだろうって。

言わせてしまって申し訳ないという気持ちと、自分の自信のなさが起因して生じたこの事に対する後悔と、なにより……素直に、嬉しいって気持ちと。

たくさんの気持ちが溢れて、先輩への想いがどんどん膨らんで、胸がギュンと握り潰されたように痛い。

『中村クン?』
「…ッ、…ずびまぜ…っ」
『…泣いてんのか?』

不安そうな声が耳に届く。

「ん"ん"っ、泣いてない、です。あの…っ、……俺…から連絡なんかして…いいんですか…?」

涙を必死に堪えて、鼻を思いっきり吸って通常通りの声に戻してから、おそるおそる聞いてみた。

『ん、つか…して欲しい』

そっか、そっか…!
先輩も、俺からの連絡が欲しいんだ。

「わかりました…ッ。先輩!おれ!毎日電話します…っ!絶対絶対、連絡しますから…!っていうか、こんなこと言われて俺…なんかもう我慢できない…色々ふっとんじゃいそ、です」

まるで、帰って来た主人にちぎれんばかりに尻尾を振って喜びを表現する犬のような心境だ。

思い浮かぶ先輩への想いを、きちんとまとめることもせずにそのまま口に乗せてしまう。きっと俺、さっきから全然要領を得ないことばっかぺらぺら口走ってる。

だって、もうとまらない。
さっきから胸がキュンキュン鳴って煩いくらい。

先輩の言動ひとつで、本当に俺の心はいとも簡単に沈んだり浮上して空高く舞い上がったりしちゃうんだ。…これはきっと、いつまで経っても変わらない気がするけど。

『ははっ、すげぇ嬉しい』

――好きだよ、と。
気持ちをこめてくれたような優しい声が耳に届いて、思わずまた泣きそうになってしまった。


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