「にぃって可愛くて、本当、食べちゃいたいくらい大好きだよっ!」


実の弟である優と特別な関係になってから幾年。両親共に仕事が忙しいうちの家庭では珍しく、そういえば最近は出張とか行ってないなぁ父さんと思っていた矢先に、「明日は父さんと母さん出張で家に居ないからね」との嬉しい通達を受けた。

少しだけ寂しそうに両親を見送る優の背中を優しく撫でながら、今日一日自分の理性が一体どこまで持つのかとハラハラしている俺がここにいる。




「優、母さん達行っちゃって寂しいな?」
「んー…このくらい!」

リビングに踵を返しながら聞けば、親指と人差し指でジェスチャーしながらそう複雑そうに笑顔を見せる優。
まだ小学生である優にとって、丸一日両親が居ないというのは少なからず寂しいものなのだろう。いくら隣に兄である俺がいたとしても。

「じゃあ今日の夜は優の好きな海老フライでも食べて元気だそうか!」
「いいの!?」
「勿論」

みるみるうちに顔を輝かせる優を見つめながら、あぁこんな展開前にもあったなとふと思い出した。
あの時はまだ俺達兄弟は“普通の兄弟”で――

「にぃ…?どしたの?」

はっとして隣を向けば、心配そうに眉を下げてこちらを覗き込んでいたらしい優とパチリと目が合う。
「なんでもないよ」と安心させるように微笑んだら、そっかとばかりに安堵の表情に移り変わる優。

「にぃも寂しい?でも僕がいるからねっ」

にこにこ〜っととびきりの笑顔で俺を元気づけようとしてくれる優を思い切り抱きしめてから、今日の夕食の買い出しに行く為いそいそと上着を羽織った。



* * *



「おいひーい!」
「俺は母さんみたいに揚げれないからな…惣菜のでごめんな?優」

口いっぱいに海老フライを頬張りながら、ぶんぶんと首を振る優。可愛い。

「んむっ…僕がそのうちにぃの為に海老フライ揚げたげるからだいじょぶ!」

なっ…なんて男前なんだ優…!
あまりの感動にお兄ちゃんは海老フライ落としそうになっちゃったよ。

「そうかそうか…そしたらお兄ちゃんは優が揚げてくれるのを楽しみにしてるぞ!」
「うんー!」




ご機嫌そうにもぐもぐタイムを満喫していた優は突然「あ、」と何かを思い付いたように箸を置いて、ゆっくり俺を見つめた。

「な、どうかしたか?」
「にぃ〜…」

頭にクエスチョンマークを掲げる俺にニッコリ悪戯そうな笑みを投げ掛けた優は、箸を取り海老フライを摘んで俺の口元へとそれを運んでくる。
まっ…まさかそれは「あーん」フラグ…!

「にぃ、あーんして?」

そんなドストライク台詞に胸をえぐられながら、おずおずと口を開いた。

「ん……っ…んん…!!」

すると優は、にやりと悪そうに笑った後さっと海老フライを皿に戻し、するりと俺の両頬に手をやって噛み付くようなキスを落としてきた。そっ…そんな技反則です優くん…!

「…んっ…んっ」

されるがままにそのキスを受け入れる。最初こそたどたどしかった優のキスも最近では確実に俺より上手くなっていて、舌を入れるような激しいのでさえ躊躇なく優からしてくれるようになった。
優のまだ小さい舌がねっとりと俺の薄い舌をまさぐって、唾液を絡めてちゅくちゅくと厭らしい音を立てながらはい回る。んん、優ほんと上手い…

「…んっ……は」
「にぃ…」

とろんとした煽情的な目を向けられる。優のこの顔だけで何回でもオカズに出来るくらい、俺は優のこの表情が好きだ。

「優…大好きだよ」
「僕も…しゅき」

堪らず優をぐいっと力強く抱きしめた。胸の中にすっぽり収まっている優はほんのり温かくて、興奮して熱を持っているのがすぐに分かる。あぁ大好きだ。優大好きだよ…!



* * *



「あ、にぃ海老フライ食べたかった?」
「んー?俺は海老フライもいいけど優からのチュウの方が何倍も嬉しいな」
「ふふふ」

誇らしげに優が身体を左右に揺らす。こうして楽しそうにリズムをとっている優を見ていると自ずとこちらまで楽しくなってくる。

「にーぃ」
「ん?」
「にぃって可愛くて、本当、食べちゃいたいくらい大好きだよっ!」
「なっ…!」

そんなの俺だって同じだよ、優。



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