「にぃ、大きくなってもずっと一緒だよね」


俺の恋人、優。自慢の弟の優は小学校高学年にしては少しだけ、ほーんの少しだけ他の子よりも背が低かったりする。俺にとってはそんな小さくて可愛い優がたまらなく愛おしいわけで、もしこの先優の身長が一ミリも伸びなかったとしても、逆にニメートルを越えるくらいまで伸びたとしても、俺は優のことを変わらず愛し続けるだろう。

でも思春期真っ盛りの優にとって自分が背の順で前の方に位置付けられてしまっているという現状は、少なからず不安や焦りの原因になっているんだろうな、と思う。俺も小学校くらいまではめっちゃ身長低かったしな。


――だから、夜中に半ベソをかきながら俺のベッドに夜這い…じゃなかった潜り込んできた優の気持ちも、分からなくはないわけで。

「ゆーうー…」

優はぐずぐずと鼻を鳴らしながら必死に俺にしがみつくように抱き着いてきている。心細そうなその背中をぽんぽんと優しく、あやすようにさすってやる。

「優…俺が居るからな、寂しくないぞ?な、落ち着くまでずっとこうしていよう」

優が落ち着く前に俺の股間が落ち着かないことになっているのは勿論必須だが、そんなことより優の不安を取り除いてやることの方が何倍も大事だ。
下半身にそう言い聞かせながら、優がたどたどしく頭をコクンと下げるのを確認して安堵する。

それにしても優は急にどうしちゃったんだろう。夜中にムラムラして夜這いしちゃいたい衝動に駆られるのに慣れている俺だけど、今日の優はそういった感じでもないし…なにか怖い夢でも見たのだろうか。それで怖くなっちゃって来てくれたのかな。まだまだ色々と情緒不安定な時期だし……。
母さんの元じゃなく俺のところに来てくれたのが素直に嬉しいけれど、とにかく優を早く安心させてやりたい。

「優…どうしたんだ、怖い夢見たか?」
「う"〜……にぃ"…」

鼻をすんすんいわせ、優はこう続ける。

「にぃは…にぃは、僕が小さいから好きなの?」
「え?!」

どがんと頭に一発喰らったような衝撃を受けた。ゆ、ゆ、優はそんな風に思ってたのか…!?俺がただのショタコンで、変態で、優が小さくて可愛いから好きなのだと。優の身長が平均よりも低くて可愛いから、だから好きなのだと。変態なのだと。そう思われてたのか…?

「小さいから好きなんだ…」
「ち、ちがう優!ゆ、優…顔上げて?ちゃんと話をしよう」
「う"…」

もそもそと起き上がってベッドの上に正座した優の顔は、豆電球の薄明かりでも分かる位しょんぼりという言葉がぴったりで。あぁもう優…!俺の想いの深さはどうすれば優にきちんと伝わるのだろう。
思いっきり抱きしめて、いっそ窒息しちゃうくらい抱きしめてやりたい。それで俺の気持ちが伝わればいいのに。

「優、俺は優が大好きだよ。それは優が小さいからじゃない。優だから好きなんだ」
「ほんと…?」
「本当。この先優がどんなに大きくなっても愛してる」
「お相撲さんみたいになっても?」
「当たり前だ」

そうにこっと笑うと、優の表情がやっと柔らかくなった。あぁ、ちょっと今安心したんだな。よかった。

優を引き寄せて俺の膝の上に乗せる。対面座位みたいな体勢に下半身がこちらを呼んでいるけれど、気にしないようにしながら優の頭を優しく撫でてやる。

「にぃ、大きくなってもずっと一緒だよね」

上目遣いにそう言われ、あまりの可愛さにくらっときながらもしっかり頷く。

「ずっと、ずっと一緒だ!」
「うん!」
「優にうざがられたって、いつまでも一緒にいるからな?」

くすくすと二人で笑い合う。そのままちゅ、と触れ合うだけのキスをして、安心して眠たくなったのか目がとろんとしてきた優をベッドまで送った俺は、今すーすーと寝息をたてている優の寝顔を飽きることもなく三十分以上は眺めていたりする。

優のことが好きすぎて、性別がどうのとか血の繋がりがどうのとか抜かしても多分、俺相当やばいところまできていると思う。このまま朝までだって優の顔を眺めていられるし、出来ることなら眺めてたい。

「ん〜…………に……ぃ」
「!!!」

あぁもう、寝言で俺を呼んでくれるなんて嬉しすぎる。
ぎゅーっと抱きしめたい衝動を堪えて、あと少しだけ、この安らかな寝顔を眺めることに決めた。




-----end--



[← →]

人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -