第5話




時刻は只今夜の9時30分過ぎ。あと30分で消灯時間になる訳だが、俺は今何をしているかというと――



「おーい大丈夫かー…?」
「うー…たかぎぃ」

風呂場で湯あたりをして倒れた横田を何とか抱えて部屋まで戻り(これがめちゃめちゃ興奮し…ゴホンゴホン。色々大変だった)、早々に布団を敷いてそこに寝かせ、たまたま持ち合わせていたうちわでひたすらに扇いでやっている。

横田は、時折うぅ〜と唸りながら眉をしかめて何だか辛そうだ。どうにか楽にしてやりたい。ああ、俺が代わってやれたらいいのに。早くよくなれ、横田。




うー…ん。苦しそうに俺の名を呼ぶ横田のその表情がなんつーかこう、堪らなく色っぽい。もっと名前を呼んで、もっと頼って欲しい。そしてあわよくば、色んな意味で介抱してやりたい。主に下半身とか。

よくよく考えてみればこの部屋には明日の朝まで俺達二人しかいない訳で、消灯してしまえば見回りの先生とかも廊下に居るだろうし、他の奴らが遊びに来たりすることもない。
ましてや横田が湯あたりをしたことは、俺が大騒ぎしたおかげで大体の生徒に知れ渡ってるから「今頃あいつら大人しく寝てんだろうな、邪魔したら悪いだろ」とか思われてるに違いない。

いやいや、なんかもうめちゃめちゃ俺邪(よこしま)なことしか考えてない奴みたいだけど、実際すげー心配してるのよ?これでも。そして理性を保つのに必死。


そんなこんなで、横田をうちわで扇いでいる内にいつの間にか消灯時間が来てしまった。
ドンドンと乱暴に部屋のドアをノックされる音が聞こえ、「はいはいはーい」と返事をしながら立ち上がってドアを開ける。
担任から「もう消灯時間だから早く寝ろよ、横田は大丈夫かしっかり看てやれ」という旨を伝えられ、二つ返事で了承しながらゆっくりドアを閉めた。

因みに、カギもしっかりかけさせていただいた。担任曰く「最近は物騒だからな」とのことで、部屋のカギを掛ける決まりになっているみたいだ。ま、そりゃそうだわな。つか先生に言われずともかけてただろう、うん。邪魔が入るのだけは勘弁だからな本当。


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