第4話
「高木、どした」
広々とした大浴場の更衣室。
本気で走って向かった俺達は本当に1番乗りだったらしく、今この更衣室には俺と横田の二人だけしかいない。
まぁ、あと数分もすれば他の奴等が溢れるように来て、一気に男臭い大浴場の出来上がりになるんだろうけど。
俺はとにかく横田の着替えシーンが見たくて見たくて、故にこんなもたもたと服を脱いでたんだけども、案の定下半身がこの迫り来る期待から大爆発してしまった訳で…。
パンツどころかズボンも脱げなくなって呆然と立ち尽くしてる、と。
「おい、高木?」
「あ、いや、ちょ、先入ってろよ!俺もすぐ行くし!しゃーねーから一番風呂はお前に譲ってやんよ」
「…早く来てよ」
早くキテよ…?うわあああ一気に脳内変換して更に下半身を煽ることになってしまったやばいコレまじでやばい助けて。
と、もう埒があかない事に気が付いた俺は、般若心経を心の中で唱えることに努めた。
目を閉じて無心の境地に至ろう。うんうん。それがいい。無理っぽいけども。
いやもう横田の着替えが楽しみ過ぎて勃っちゃったとか洒落にならないからな。色んな意味で。
ぶっちゃけ自分でもよく分かっちゃあいない般若心経をテキトーに唱えること約数秒。
漸(ようや)く俺の息子も落ち着きを見せてくれ、やっとこさ無事に服を脱いで浴場への楽園の扉を開けた。
と、真っ先に目に入ったのは横田のチン…ではなく、もう既に湯舟に浸かって気持ち良さそうに目を閉じ、ほかほかしている横田の顔だった。
「おま、中入るの早くね?」
「きもちー…」
お湯を両手で掬って顔にぱしゃんとかけ、「ぷあー…」とか言ってる横田がもうツボ過ぎてやばい。
そんじゃ俺も早いとこ湯舟入って二人だけのお風呂タイムを楽しみたいところ…
「わー風呂だーっ」「ひゃっほーーい」「アレ?誰かいんぞ」「おいおい誰だよはえーなー」「ひゃっほーーい」
うわあー…。
タイミング良いというか悪いというか悪いというか、更衣室の方からクラスの奴らの馬鹿丸出しの声がしてきやがった。みんなどんだけテンション高いんだよ。(別の意味で)分かるけども!
「みんな来たね」
「だな、一気にうるさくなるな」
「残念」
え?今残念って言った?
それってもしかして「俺と二人きりのお風呂タイムを邪魔されて残念」ってこと?
「なぁ横田」
その真偽を確かめるため、ふと隣にいる横田へ体ごと向きを変える。
すると、
――横田は見事にぶくぶくと湯舟の中に沈んでいく最中でした。
「よこたあああぁぁぁ!!」
(4/51)
menu▼top