第34話
自室のベッドに横たわりながら俺の心は果てしなく沈んだままだった。
そりゃそうだろ。結局俺は失恋したんだから。いやいや分かってはいたよ?この気持ちが横田に届くわけもないことくらい。
「…はぁ……」
思い切り長いため息をついてふとベッドサイドにある携帯に目をやると、携帯の不在着信のランプがチカチカと光っていることに気付いた。
「…まさか横」
田なわけないか。
着信履歴にはずらりと『山下』の文字。ったくあいつはとことん空気読まないな…。
なんとなく肩を落として手に持っていた携帯を放り投げようとした矢先、ブルブルと携帯が震えだして着信を知らせ始めた。
「もし」
『あーっもうやっ…と出た!!高木お前何してたんだよ電話出ろよ全くなーにやってん』
なんかカンに障ったのでそのまま通話を切ってやると、案の定すぐにまた着信が鳴る。
「っだよ」
『切るなっつの!どんだけ俺の事邪険に扱う気だよ!』
「え〜…まぁ気が済むまで?」
『そこの答えは求めてねぇよ!ってか高木さんよぉ?』
――山下の用件はこうだった。
明日、斑のみんなで打ち上げやるから来いと。カラオケオール飲み放題で予約取ってあるからそこ集合だぞと。それだけだった。
「んなもんメールでいいだろが…」
奴との電話を終えて、携帯をベッドの端に放り投げながら弱々しく呟く。
「あ、」
飲み放題ってことはあれか、横田はまた今回も来ないのか。
横田くんは酒が入ると淫乱…じゃなくてあんなんなっちゃうんだもんな、 だから今まで仲間内での飲みとかも来なかったっていうのに、一昨日の夜、は……。
「あ"〜…っ」
駄目だ駄目だ駄目だ。どうしたって頭の中横田でいっぱいになっちまう。思考が完全にエンドレスループ過ぎる。
「…っはぁ…」
でもまぁ、明日早速横田の顔を見ずに済むのは少しだけ良かったのかも知れない。まだまだ自分の中で横田への複雑な想いが整理できてねーからな。
それで、週末挟んでその間に自分の気持ちとか全部整理して、来週からスッキリさっぱりまた元通り、横田くんと仲良くしよう。そうしようそれがいい。
「うしっ!」
どん、とベッドから両足を床に付けて勢いよく起き上がる。
とりあえずオカズが新鮮なうちに一発抜いちゃおうと部屋の鍵を閉めに行った時、ベッドに埋もれた携帯がブルブル音を立てていたことに、横田の事で頭が一杯だった俺は気付かなかった。
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