第27話




「…寝たか?…まぁいいや…いいか、お前らどーせ聞いてんだろうから言っとくけど、お前らが騒ぐと怒られんのは担任の俺なんだよ。面倒くせーから静かにしろ」

布団に潜っているこの状況だと、先生のだるそうな声が余計にくぐもって聞こえてくる。
先生は逐一かったるそうにしながらも、やっと部屋を後にしたらしい。ぱたむと部屋のドアが閉められて鍵がかかった。つか、なんだかんだで先生結構すぐ部屋出てったよ。やっぱり。


漸くこの暗闇にも目が慣れてきた。どうせ寝てんだろうなとか思いながらチラッと横田を見遣れば、横田は何故か目をかっ開いてじっとこっちを見ていた。


「…先生、行ったよな?」

また急に襲ってきたドキドキを隠すように、なんとなく小声になって横田にそう聞けば、よく聞き取れなかったけど何何?みたいなリアクションを取りながら横田がぐいっと体を寄せてきた。
まっ、まずいって近すぎ…!

「…だ…からっ…」

ほぼ目と鼻の先にある横田の耳元でもう一度さっきと同じ言葉を繰り返した途端、そのままうんうんと頷いた横田は何を思ったか急に首をぐぐいと90度動かして、顔だけ向き合う形になった。
…つまり、まじでキスする5秒前的な距離。

「…っ、」

顔がボッと一気に上気したのが自分でも分かった。何この状況。何この距離。何この横田の顔。
横田のやる気の無い瞳はしっかりと俺の姿を映していて。
このままだとキス、してしまいそうな…


「……っ」

――気付いた時には俺と横田の唇は重なってしまっていた。
どちらからともなく縮まった二人の距離が、自然と唇を合わせる形で終着する。

ってちょ…え、ま、ちょ…え?
今、キス…した…?

頭の中が完全にオーバーヒートした。う、わ…!やばい。
顔に当たる横田の鼻息が熱くて、ついでに横田の足が何故か俺の足の間に絡まるように入ってきてて、あー…っもう理性がブチ切れてしまいそうだ。脳みそまで興奮し過ぎで茹だって痺れてマジで機能停止しそう。
絡まり合ったお互いの足が、触れているその部分がカーッとすぐに熱くなって、下半身がずくりと疼く。

「…んっ…よこた…」

知らず知らずの内にというか、男の性(さが)というか、無意識的にというか。
俺は愛する人の名前を呼んで、その後ろっ首に手を回して後頭部を掴み自らに近付けた。

「ん…っ…」

これらの行為すべてに抗うこともせず嫌がる素振りすらみせずに、横田は何で俺からの再びのキスに素直に応じているんだろう。

「…っ、…んっ」

つかなんでこんな何回もキスしてんだよ俺達。俺は嬉しいけど。いやいや一回だけならともかく、こんな……もう事故とかでは済ませられないとこまできてるよな…?



漸くお互いが離れた瞬間、無意識に熱のこもった息が思ったよりも零れていることに気付いてギクリとした。少しずつ冷静さが戻ってくる。

周りの奴らに聞こえてはしないだろうか。バレてはいないだろうか。俺と横田が潜り込んだ布団の中からこんな甘い吐息が聞こえたりしたら、それはそれはもうやばいことになるだろう。ホモ疑惑炸裂だ。俺は疑惑も何も元よりホモなわけだから構わないけど、横田にまでそんな疑いがかかるなんて駄目だ。

なんで歯止めがきかなかったんだろう俺、とか、理性より本能が勝ってしまったこの事実についての後悔だとか、色々考えることはあるんだけど。

あーやべ、終わった。
率直にそう思った。


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