第25話
「ちょ!やめろって!」
「いくぞー!班長・山下のストリームシュートアターック!」
「おい聞けっ…っうわっ…!」
山下の両手にあった枕が二つ共見事に俺の顔にヒットした。高木は200のダメージを受けた。
「高木お前どんくさいなー!いいか?班長スキルは通常の三倍の威力を発揮出来るんだぞー!」
「知るか!あほっ!ばかっ!」
わざとらしく頭をさすりながら、はっはっはと高笑いをかます山下にお返しとばかりに枕を思いっ切り投げつけてやった。
――何で枕投げなんかしてるのかって?横田と話すんじゃなかったのかって?
…こっちが聞きたいわ!そんなんこっちが聞きたいんじゃボケー…。
事の発端はもちろんあいつ。なんちゃらストリームシュートアタックを発動させてたあいつだ。
部屋からそそくさと出ようとする俺と横田に向かって一言。
『決戦を前に逃げるのか?』
っていやいやアホだろ。
みんなで枕投げは修学旅行的に外せないイベントの一つではあるけれど。昨日の夜もそんなこと思ったりもしたけども。
でも俺の世界の中心は横田だ。横田と折角まともに話し合いが出来るチャンスが今目の前に転がっているというのに、それと天秤にかけて重くなるほどのことではないわけだ。
……そう思っていたのに、隣に佇む横田くんはそうではなかったらしく。
横田くんは無言のまま、そこらに散らかっていた枕を手にしたのである。
「よこ…」
言い終わる前に、決戦は幕を開けた。
* * *
「くらえ!班長ドロップシューティーング!」
――どんどんどん!
「……!」
主に山下がきゃっきゃはしゃいでいる枕投げの最中(さなか)、いきなり部屋のドアがどんどんと乱暴に叩かれる音で総員一気にお口にチャックが掛かった。
基本チキンな俺は心臓をわしづかみにされたような緊張感を味わいながらも、チラッと時計を見てみれば時刻はとっくに日を跨いでいて、つまり消灯時間なんてとっくに過ぎていた。
あーまずいな。先生合い鍵使って入ってくるかも。別に喫煙とか酒盛りしてるわけじゃないから別にいいけど。あ、でもたしか消灯時間過ぎて騒いでた奴は朝まで正座とか言われてた気がする。昨日の代理班長会議で。やべ。
とにもかくにもまぁ、こういう時の男子高校生の団結力たるや素晴らしいもので。
山下が守備よく部屋の電気を消したのを皮切りに、皆それぞれ一番近くにあった布団の中に潜り込んだ。
もちろん俺も例に倣って、すぐそこに敷いてあった布団の中にダイブして掛け布団をバサリと掛けた。
――そこには先客がいた。
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