第21話




「………今日は、」
「自由行動だあああぁ!」

山下の奴…元気有り余り過ぎだろ。修学旅行1日目から参加出来なかった所為なのか山下を始めとする松田、田中、佐藤はみんなそろって朝からテンションが高かった。

普段より三割増しのこいつらのテンションにげんなりしつつ、でもやっぱりちょっとした罪悪感もあったりして、はははと苦笑いながら俺はおとなしくタクシーに乗り込んだ。




「…………高木」
「は、はいっ」

1台のタクシーに班全員が乗るのは不可能な為、2台に分かれて目的地まで行くことになった。
とりあえずグッパーで決めたら、うまいこと俺と横田と山下、松田と田中と佐藤に分かれちゃったっていうね。はは。

男子高校生3人がぎゅうぎゅう詰めになって後部座席に座るのもなんか気持ち悪いってことで、助手席部分には山下が座って、後ろには俺と横田。うん。まーある意味空気読んだ流れだよね。

「あの……さ、」
「う、うん?」

ドキドキしながら隣を向いて横田の紡ぐ次の言葉を待っていると、「…た」と横田が口にしたところで、

「なーなーお前らー!前のタクシー追ってくださいとかウケんな!なんか俺達スパイみたいじゃね?な!な!」

助手席から身体ごとぐいんと後ろ向きになって、アホ丸出しの顔で山下がケラケラと笑いかけてきた。

「しっ、知らねーよ!」

本当に私事で申し訳ないが、非常に今イラッとしてしまった。せっかく横田が何か言いかけてたのに。
だから横田の言葉を遮って、山下の頭を丸めた修学旅行のしおりでぱっしーんと叩いてやった。

「ちょっ、痛!高木のアホ!」

わざとらしく頭を押さえて顔をしかめる山下に「ばーか、前向いてろこのバカ」と散々罵りの言葉をかけてから、よしと意気込んで隣に顔をやれば、

「……う、まじか」

横田くんはこっくりこっくり。ドア側に体を傾けながら、静かに浅い眠りについていた。


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