第18話




「…っ」

窓から容赦なく差し込んでくる朝日に瞼を刺激されて、ゆるりと目が覚めた。
見えない何かに押し潰されてるみたいに異様に重い瞼を開くと、見慣れない天井。…あ、今俺修学旅行中か。

「ふわあぁ〜……」

思い切り欠伸をかまして、寝転がったままごろんと横向きになる。
パッと目に入ったのは、もう一組の布団。

「…っ!」

掛け布団は剥がされて、シーツもくしゃくしゃで、枕には沈んだ後。その布団の主は言わずもがな横田くんで、横田くんといえば昨晩、つい7時間程前のことだがえーと遂にやっちゃったというか、いやいやヤっちゃってはいないんだけど、でもやっちゃったっていうか…。ノリって怖い。酒って怖い。

夢のような出来事だった。
修学旅行の一夜を横田と二人きりで過ごせた事がもう奇跡だし(これは俺が山下達に一服持ってしまったからだが)、横田と酒を酌み交わして、酔った勢い…というか何というか、まさかの横田の酒癖?性癖?みたいなのも知ることが出来た。

そしてここからが大事なことなわけだけども、横田とその……コキアイ…してしまった訳で……。
こき合いっつーか、俺は横田に触られてソッコーで出ちゃったから正確にはこかれちゃあいないんだけど…いや今そこはどうでもいいか。

すげー夢みたいだった。
横田への俺の気持ちなんて、一生伝えるつもりも叶う希望も持ってなかった。あ、いやそれは今でも同じだけど、あんな事すら起きるなんて思ってもみなかったから。

ほんと夢みたいなー…

「……って、」

夢か?昨晩のアレって夢だったっけ?俺の強すぎる願望がついに深層心理夢にまで影響を及ぼしちゃってそれであんな都合のいい夢を見てしまったーみたいな?

ガバリと勢いよく薄い掛け布団を剥いで、上体を起き上がらせる。ゆっくりと辺りを見回して、あるものを探した。
――そう、部屋の隅に置いてあるはずのゴミ箱だ。

目的のブツは所定の位置には無く、しかしよくよく部屋をこらしてみればなんてことはない、布団が敷いてあるとこの足の部分。つまり北側だ。そこにポツリと置いてあった。

「……」

どくん、どくん、どくん。
心臓の音がやけに煩い。なんでって、この中を見れば真実が分かるから。

どくん、どくん、どくん。
祈るような思いでゴミ箱の中を覗く。

そこには、

「……神様っ…!」

くしゃくしゃに丸められた計2個のティッシュの塊が入っていた。



「…あ、高木おは…わっ…!」

とそこに、タオル片手に洗面所から出てきた横田が朝の挨拶もそこそこに洗面所に引っ込んだ。おはわって何だよ。おはわって。可愛い横田。

「よこ」

た、と言おうとした時にはもう既に洗面所のドアがパタリと閉められた後で、俺はがむしゃらに頭をがしがしと掻いた。



冷静になって考えてみよう。
今の横田の反応は……絶対昨晩のことを覚えてて、そんでおまけに後悔してて、なんかもう俺に対してどういうリアクションとったらいいか分かんなくて、とりあえず顔洗って戻ってきたら元凶である俺が起きてて、慌てて洗面所に引っ込まざるを得なかったと。うんまぁ妥当な考察だよね我ながら。

まぁそんな考察をしたところで、何かが変わるわけでもなく。

どうしたもんかと眉をしかめながら、壁にもたれて膝を抱えた。


[back] [next]
(18/51)
menutop

人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -