人気者×内気平凡


なんで。
なんで月島君は、ぼ、ぼ、僕なんかにこうして構ってくれるんだろう。



「おーい!正ちゃーん!」

いつも下校時間になると月島君は、決まって僕のクラスの前にわざわざ来て大きい声で僕の名前を呼ぶ。そんな月島君の声でクラスのみんなの視線は一斉に僕に向くし、その、は、は、恥ずかしい。
僕はその、クラスでもそんなに目立つ方ではないし、みんなでぎゃあぎゃあ騒いだりするタイプでもないのに、そんな僕とは正反対なタイプの月島君が何故僕なんかと毎日のように一緒に帰ってくれているのか、今でもよく分からない。



人気者×内気平凡



「えー月島ぁ!あんな眼鏡クンと一緒帰んないでさ、ワタシと遊んでよー!」

髪の毛をくるくるに巻いて化粧とかがすごいような、僕とは縁遠いタイプの女の子から月島君がこういう風に言い寄られているところを見るのも、一回や二回のことじゃない。クラスで僕が“眼鏡クン”って呼ばれていることだって、僕、知ってるんだ。

「はあぁ?何お前正ちゃんのことあんな眼鏡呼ばわりしてんの?そんな人の気持ちも考えらんないような奴と遊ぶ気はさらさらねーし、そもそも俺は正ちゃん一筋なの!」
「うっわ、ノリ悪」
「仕方ないよマキコ、月島あの眼鏡のことになるとさ…」
「ん、そゆこと。マキコ、エリ、そんじゃあな。…ってぅおーい正ちゃん!何ボサっとしてんだよ!早く帰んぞーっ!」
「あ……う、うん…っ」

いきなり月島君の視線がこちらに向いてビクっとした僕は、急いで鞄に教科書を詰め込んで席を立つ。




「あのクソ女共のことは気にすんなよ?」
「あ……うん、だいじょぶ」
「っあ!正ちゃん、今日、正ちゃん家行ってもいい?」
「…あ、う、うん」

「そういや実はオレさー!この前のテストで赤点オンリーだったんだよね!」
「…えっ…」
「はははっ笑っちゃうだろー?だ・か・ら!勉強教えて?」
「あ…うん…もも勿論」
「正ちゃん優しい!好きだよー!」

学校からの帰り道、月島君今日は何で僕と同じ最寄り駅で降りたんだろう?って思ってたらそういうことだったみたい。うん、勉強教えるのなんて全然構わないんだけど…。

「あの、さ、」
「ん?どした正ちゃん?」
「あ…、」

あの女の子のこと、いいの?とか、「好き」ってどういうこと?……なんて、聞ける訳がない。

「あああ…う、なな、なんでもない…」
「正ちゃんは毎度のことながら、可愛いなぁ」

そう言って月島君はさも当たり前のように、僕の頭をくしゃっと撫でる。僕よりはるかに背が高い月島君は、そうやってごく自然に僕を片手で引き寄せる。まるで僕が月島君の彼女にでもなったみたいに。…い、いや、そんなこと言ったらおこがましい、な。
いつも月島君は僕を可愛い可愛いと、好きだよと、そう言っては頭を撫でたりだとか、肩を寄せてみたりだとか、スキンシップが絶えないんだ。

つ、月島君はきっと、誰にでもそうやってへらへら笑って、「可愛い」とか「好き」とか言える人なんだろうなぁ…。
でも僕は、人にそうやって言われることなんて今までなかったし、その…、は、は、初めて、「好き」だなんて言われて、その、ちょっと嬉しかったりしていたんだけど……

「どした?正ちゃん?」

一人で色々と考えていたら、急に月島君が僕の顔を覗き込むようにぐぐっと近付いてきていて、至近距離でばちっと交わる視線にドクリと胸が高鳴った。

「あ……んーん、な、なんでも」

ドキドキドキ、と心臓が血液を送り出す速度が速くなるのが自分でも分かる。ぼ、ぼ、僕は、月島君のことが好き……なのかな、でも月島君は男の子だし、とっ、友達だし、ましてやみんなの人気者な月島君には彼女の一人くらい、いたって全然おかしくない。そういえば、恋愛の話を月島君としたことってあんまりないかもしれない。……今日、勉強が一段落ついたら聞いてみようかな。


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