弟Festival
番外編



遂に来てしまったのか、という思いと、いやいや来ないとかうちの弟に限って有り得ないだろうとかいう思いと、不安というか焦りというかまぁ、色んな思いが一気に頭の中をぐるぐると巡っている訳だ、俺は。
それ程に強烈な一言が、先程優の可愛い口から放たれた。



「僕ね、今日クラスの女の子に好き!って言われちゃった!」

――どどーん

本当にそんな効果音が頭の後ろで響いているような不思議な感覚に陥りながらも、リビングで(というか母さんが居る前で)会話をしている手前、「そうかそうか、告白されたのか優は!モテモテだなー?」と渇いた笑いでごまかす。

本当は今すぐ優に色々問い詰めたい。優は何て答えたんだ?まさか付き合ったりはしないよな?むしろ“お兄ちゃんと付き合ってるんだよ”なんて言ったりしてないだろうか…そもそもそのクラスの女の子は可愛い子なのか優?いつぞやプールで出会った二人の幼女の内の一人なんだろうか…。もっ、もしかしたら“好きって言われると何となく気になっちゃう心理”が働いてフラれたりして俺…!

「はっはっははは…」
「にぃ、お顔ヘンだよ?」
「そっそうか?んにゃ、そうだな、お兄ちゃんの顔は優と違ってヘンだもんなーあはっあはは…」
「にぃ…」
「あんた…優が憐れんだ目で見てるじゃないの」
「母さん…母さん、俺の良いところは全部優に受け継がれてしまったのかな…母さんや…」
「あんた何バカなこと言ってんの」
「…にぃは格好良いよ?」

優、優の目に今、俺はどう映っているんだろうか。



弟Festival 番外編



「え?僕の目には大好きなにぃの姿しか映ってないよ?」

あれから約二時間後、やっと兄弟が揃って自室にこもっても問題のない時刻に差し掛かり、俺は早速、優をベッドの上に座らせて話しを聞くことにした。

可愛い青リンゴ柄の黄緑のパジャマに身を包んだ優は、さながら本物の青リンゴのように小さくちょこんとベッドに腰を下ろして両足をばたばたとさせる。

「そ、そうか…!それで優…えっと、あの、その…」
「もしかしてにぃ、不安なの?」
「えっ…ん、えと…」

どう質問をすればいいものかとしどろもどろになっていると、一瞬何か閃いたような顔をした優にそう言われ、思わずたじろいでしまった。
すると優はふにゃりと柔らかい笑みを見せて、真正面に正座して座っている俺の膝の上に跨がるように抱き着いてきた。急に抱き着いてくるとか優それ反則!そのまま優は俺の背中に手を回して、これでもかってくらいに力一杯その手に力を込めて抱きしめてくる。だから優それ反則!そういう不意打ちに弱いからね俺!

「にぃ」

そんな優の動作に呆気にとられながら幸せを噛み締めていると、ふいに耳元で名前を呼ばれて背中にビクリと衝撃が走った。あ、今ちょっと勃起した。

「優…?」
「にぃ、心配しなくてもいいよ。僕はにぃだけのものだから、にぃ以外の人に興味なんかないんだよ?」

耳元で小声のままそう続けた優は、ゆっくりと身体を離して、でも俺に抱き着いたまま、じっと俺の顔を見詰める。「ね?これで安心した?」そう優の顔が物語っていた。

「優は……お兄ちゃんなんかよりも、クラスの女の子と付き合いたいんじゃないのか?」

恐る恐るそう聞いてみれば、

「…何言ってるのにぃ!僕の話聞いてなかったの?」

ぷぅっと頬を膨らます優。

「ごめんな、優。お兄ちゃんちょっとナーバスになりすぎてたな」

リンゴみたいに膨らんだ優の可愛い赤いほっぺたに触れながら謝って、少し重なるだけの軽いキスを落とした。
よかった。俺は本当に心配しすぎていたんだな。優は俺が思ってるよりも、俺のことを好いていてくれているんだ。よかった…


「にぃ…もっと、したい」

俺の首に手を回して上目遣いに優は言う。コクリと頷いてその続きをしようとしたら、

「にぃの不安、僕が全部取ってあげる」

そう言って、優から甘くて激しいキスが降ってきた。

「…んっ…っ」
「んぅ…っ……」

俺の不安を全部取ってあげるとか、そんな男前なことを言ってくれる優に感極まりながらも、その与えられる幸福に、どんどん不安が取っ払われていくのを感じていた。



「優」
「にぃ」

こうして見つめ合って、俺達は互いを呼び合って、愛を確かめ合うんだ。

優。心から優のことが大好きだよ。情けないお兄ちゃんだけど、これからも優に好きでいてもらえるように頑張るからな。
お兄ちゃん、優の為なら何だってするからな。優の幸せが、俺の幸せなんだ。

優が他の女の子に目がいったりしないように、お兄ちゃん、頑張るよ。





---fin---




匿名様よりリクエスト頂いた「弟Festival」の番外編です。周知の通り優くんは結構モテモテだったりします。そしてお兄ちゃんもモテない訳ではないのですが、極度のブラコン疑惑が浮上している為ちょっとアレな感じに思われていたりします(笑)はい。リクエストありがとうございました!




[← →]

「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -