ヘイスケは毎日いつも昼頃までのうのうと眠りこけ、我輩がヘイスケの頬を手でつんつんと押し起こそうとしてやっても一向に起きない。そして漸くハッと目覚めると、朝飯も食わずにそそくさと家を出ていきおる。
「っあ!小太郎のご飯用意してなかった!」
いつものように玄関で靴を穿きながらそう声を上げると、急いでぱたぱたと戸棚から我輩の飯を取り出して皿によそってくれる。こらヘイスケ、お前は毎度のことながら靴を穿いたまま部屋を歩くのをやめい。
「うなー…!」
「お!腹減ってたんだな小太郎ーよしよし!ごめんごめん!そんな怒るなってー!」
ガシガシと乱暴に頭を撫でられ、頭が左右に大幅に揺れる。ヘイスケは全くいつも考え無しなのだから困る。
しかし今日は、そんなことよりも何よりも困ることが起きたのだ。
我輩とヘイスケの関係
番外編
「にゃ〜…」
ヘイスケが大学とやらに出掛けてしまうと我輩はヒマだ。ゆっくり窓際へと歩を進め、日当たりの良い場所で横になって、しばし目を閉じて軽い眠りについたのがいけなかったらしい。
ふと目が覚めてぐぅーっと背伸びをすると、明らかに身体の感覚がおかしいのだ。
「に、にゃ……?」
ふいに声を出せば、出て来たのはいつもとは雲泥の差のある低い、人間の声。
もしや後ろに誰か…そうだ、ヘイスケの友人とやらが居て我輩の仕草に合わせて声を出してふざけているのだろうか、いやそうに違いない。ヘイスケの友人は我輩のことをいつもいじり倒して遊びおるからな、そうだろう。
そう思いバッと後ろを振り向いて、窓ガラスに映った自分の姿を見て、我輩は驚愕した―――