02


――チュ

なななななななななんと!
高橋君は躊躇なく、一センチ程あったはずの我々の距離を零まで詰めていき、遂にその薄い唇が僕の唇にピタリと重なってしまったのだ。

「…っ…!!!!」

一瞬だけ重ねられた唇はすぐに離れ、目を見開いたままの僕とは正反対に高橋君は何とも熱のこもった目で僕を見詰めてくる。

「たっ…たかはし、君……」
「ははっ、これでA、終わったよ………ってアレ?ちょ、えっ…?!…え!?…ちょ、は、鼻血…!」





――次に僕の意識がはっきりと覚醒した時、何故だか僕はベッドに横になっており、鼻にはティッシュが詰められていて、心配そうにこちらを覗き込む高橋君のしょげた顔がよく脳裏に焼き付いていた。

僕はなんと情けないことに、高橋君からきっ、きっ、キスをされて、鼻血を垂らしながら意識を飛ばしてしまっていたらしい。

「可愛いなぁ」
「なっ…可愛いなどと…!」
「ははっ、でも俺も初めてだったのに…まさか気絶しちゃうなんてなー?」
「むむ…申し訳ない……」

眉を下げながらそう言う高橋君にたじろぎながら謝れば、打って変わって表情を明るくした高橋君は「謝んなよ」と一言。

「むぅ……しかしだな……」
「ね、じゃあさ、Bもしていい?」

ニヤリと意地悪そうな笑みを浮かべた高橋君はそう言って、ベッドに横たわったままの僕を見下ろす形で顔を近付けてくる。いかん、あんなことがあったすぐ後なのにまたこんなに近くに高橋君の顔が……はっ、鼻血がまた出てしまいそうだ…。

「ちょ、ちょっと待ってはもらえないか?その…ま、また鼻血を出して倒れてはかなわんから…」

たじたじになりながらやっとの思いでそう告げると、高橋君は爽やかに笑いながら僕の頭を撫で、極めて優しい口調でこう言った。

「冗ー談。俺、キスできただけで今すんげー嬉しいから。…つか、その先なんてまだ考えられないかも。俺だって気絶しちゃいそうだ」
「高橋君……」

そうへにゃりと照れたようにはにかんで目を細める高橋君は、今まで僕が見てきた高橋君とは違った顔に見えて、心臓を天使の矢で打ち抜かれたみたいにキュンと胸が高鳴ってしまう。





「好きだよ?」

揺らぐことのない高橋君の澄んだ瞳は、真っ直ぐに僕を見つめてくる。

「……僕も、好きだ」

そう言って、起き上がりざまに高橋君の頬にキスをした。

「〜〜!!?」

嗚呼、高橋君でもこんなに顔を赤くして照れたりするのだ。
もっと、もっと……高橋君の色んな表情(かお)を見たいと思うのは、おかしい感情なのだろうか。

「…たかはし、くん」
「ん?」

『B』が何なのかを尋ねようかと思ったが、その言葉はすんでのところで飲み込むことにした。

「いや、何でもない」

自分に言い聞かせるようにそう言って、ベッドから降りようと腰を上げたその時。
徐にガシリと腕を掴まれた。

「……でも俺、やっぱ色々と我慢できねぇかも」

そう言った高橋君の顔は、やけに艶(なま)めかしくて、思わずゴクリと息を飲んだ。





---fin---




くもり様よりリクエスト頂いた「生真面目チョコレイト」の番外編です。
このあと何しちゃうんだよどうなっちゃうんだよもしかして…(*´Д`)ハァハァ…って感じになりました。まさかこの二人のキスシーンを描けるなんて思ってなかったので描いててすごく楽しかったです。そしてこれ最後の方ずっと鼻にティッシュ詰めたままなんだよなぁと思うと微笑ましいこと山の如し。
くもり様、リクエストありがとうございました!




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