――ガチャ
「たっだいまー!って何で部屋の電気点いてんだ?……ってあれ?あれ?ど…どちら様?」
「どちら様?ではない、我輩だ」
「うえぇえ?!ご、ごめんなさい!」
「…何故謝るのだ?」
「え?いや強盗さんとかですよね?すみません今これだけしかなくて…」
やけに震えながらヘイスケが我輩に差し出したのは財布だった。さっきから強盗さん?とか、ヘイスケは何を言っておるのだ?
「……?意味が分からない」
「え?え?何オレこれ殺され……っ!?」
――ぐい
「よく見ろ、ヘイスケ。これはお前が買ってくれた首輪だろう?」
ヘイスケの服を軽く引っ張り、我輩の首元に顔を近付かせてやる。
「我輩は、小太」
「小太郎っ?!小太郎なのっ?!」
小さな鈴の付いた赤い首輪を見て、我輩が言い終わる前に事の真相に気付いたらしいヘイスケは、びっくりしたように声を荒げて、かと思えば今度は目尻を思い切り下げて満遍ない笑みを浮かべる。ふっ、やっと気付きおったか、馬鹿め。
「うなー…っゴホンゴホン」
「ははっ!小太郎は人間になってもまだネコ語が抜けないのな!」
楽しそうににっこり笑ってそう言うヘイスケの頬をペロペロと舐めてやる。ヘイスケめ、へらへら笑いおって。
「なっ…こ、小太郎?」
「ん?」
「なっ舐めるなってっ…」
「何故だ?」
ヘイスケは本当によく分からんな。我輩が世話をしてやってるヘイスケを愛でて…舐めて、何がいけないというのだ?それに、いつもしていることではないか。
我輩はいつもしているように、ヘイスケの頬から唇にかけて舌を這わせる。人間の舌は大きくていけないな、ちょろっと舐めただけで唇全体に舌が行き渡ってしまう。こう…もっと…
「んっ…ん、こたろ…っ」
ん?ヘイスケの反応がこう、いつもと違うな…。いつもなら「こらこら小太郎ー」などと笑いながら我輩を抱っこするというのに。ヘイスケ、何故今日は我輩を抱っこしないのだ?
「…ヘイスケ」
「っん?」
そうだ、今日は我輩は人間なのだ。ヘイスケが抱っこしないのならば、我輩から抱っこしてやればいいのだ。
ずんずんとヘイスケに近寄り、我輩を上目に見遣るヘイスケにふっと笑って、背中に手を回して抱き抱えてやる。んぅ、人間とはこんなに重いものなのか。でもまた、こんなずっしりした重みも良いものだな。
そのままヘイスケの首元に唇をやり、すんすんと匂いを嗅ぐ。
「…っ、小、太郎…っ」
あぁほらまた、こんな搾り出すような掠れた声を出す。ヘイスケのこんな声、我輩は今まで聞いたことがないぞ。…全く、けしからん奴だ。
「ヘイスケ……」
「う、うわあっ…ちょ、こら」
ちゅ、ちゅ、ちゅっと音を立てながら首筋を舐めると、ヘイスケは慌てて我輩から逃れるように暴れ始めた。むぅ…なんなのだヘイスケは。
仕方なくヘイスケをゆっくりその場に降ろしてやると、力が抜けたかのようにへなへなと床に座り込むヘイスケ。にゃんだというのだ……
「ヘイスケ…?」
ヘイスケの顔を覗けば、あいつの顔はリンゴのように真っ赤に染まって、何やら股間をもぞもぞと隠すように両手で覆っていた。
「もしや、そこが痛いのだな?どれ、我輩に見せてみろ、舐めてやらんこともないぞ?」
「なっ…!小太郎!それどういう意味か分かってないだろっ」
「ん?舐めたら治るのではないのか?」
我輩の言葉に更に顔を赤くしながら恥ずかしそうにヘイスケは片手で顔を隠すように覆う。こんなに照れて可愛いヘイスケは初めて見たな。……仕方ない。
「わっ…!こ、こたろっ…」
「黙れヘイスケ。我輩に任せておけば心配はない」
無理矢理にヘイスケを抱き抱えて、寝室へと運ぶ。
ベッドというものはやけに小さいのだな。……あ、横に並ぶから狭いのだ。我輩がヘイスケの上に乗っかってしまえば問題なかろう。
「…ちょ、小太郎!お前今ネコじゃないんだからっ、ってちょっ…!どこ舐めてんだよ…っ」
ヘイスケは全く、おかしな奴だ。我輩はいつものようにヘイスケと遊んでやってるだけだというのに……でも、こんなヘイスケの姿も、なかなか良いものだな。
---fin---
あんみつ様、プー子様よりリクエスト頂いた「我輩とヘイスケの関係」の番外編です。
これ小太郎は攻めてる意識はきっとないですね(〃ω〃)このあとベッドで二人は何をするんだか…そして小太郎はどこを舐めてるんだか…(照)
あんみつ様、プー子様、リクエストありがとうございました!