02


「ふぅ」
「…ふぅ、じゃない…よ、月島君……まだノート半分しか埋まってない…」
「え!半分も埋まればすごくね?ダメ?」
「んー……」

えっと、えっと、すごい…のかな?僕は判断に迷いあぐねて、軽く苦笑う。
机の上に広げられたノートには、月島君らしい、乱雑であんまり綺麗とはいえない字で、英単語がノートの半分くらいまでびっしりと書かれていて、うん…多分、月島君なりに頑張ったんだと思う。

「…きゅ、休憩、する…?」
「するー!」

んー!と気持ちよさそうに背伸びをかました彼は、そのままバサリと僕のベッドへとダイブした。俯せになる形で枕に顔を埋めている月島君。

「…正ちゃん」

ふと、いつもよりも低めの声で僕の名前を呼ばれてビクっとなる。いつもみたいにふざけた感じじゃなく、首の角度を変えてこちらに顔を向けた月島君の顔は、いつになく真剣だった。

「……?」

その真剣だった顔がふにゃりと崩され、甘い笑みを垂れながら月島君は片手でちょいちょいっとこちらに手招きをする。
頭に?マークを浮かべつつも、黙って僕は月島君に近寄った。

すると「ほら、こっち」と自分の横をぽんぽんと手で示しながら、にこりと笑って月島君は僕をじっと見詰めてきた。と、隣に寝ればいいのかな…?で、でも、僕のベッドはシングルだし、高校生の男二人が並んでねっころがるにはちょっと狭いような……そもそも何で、わ、わざわざ隣に来させたがるんだろう月島君は……

そんなことが頭の中でぐるぐると巡って意識を飛ばしていたらしい僕は、ふいに腰辺りに回されていた月島君の腕と温もりにハッとなる。

「つ、月島君っ」
「ほら、早くこっち」

う、うわぁ…月島君が僕をベッドまで運ぼうと抱き抱えるものだから、僕の肩辺りに月島君の顎が乗ってて、その、ち、近いよ月島君…

――ばふっ

そのままガバリと簡単に抱き抱えられてしまった僕は、ベッドに優しくその身体を沈めさせられた。男の子二人を支えている僕のシングルベッドは、ミシミシと小さく音を立てる。

「なぁ、正ちゃん…」
「な、に」
「チュー、してもいい?」
「えっ…!」

突然のビックリ発言に身体が硬直する。今や目と鼻の先にある月島君の顔は、いつもとは違う大人っぽい顔付きに変わって、じーっと僕を見据えていた。
えっと、チュ、チューって…?!今時の高校生は、男の子同士とか友達とか関係なくキスとかしてしまうものなんだろうか…?月島君はこんな風に、誰とだってキスをしてしまう人なんだろうか…。

「えっと、」
「もう俺我慢出来ないよ、正ちゃん…。つか俺らさ、全然進展してないっしょ?」
「………えっ…?!」

月島君の口が薄く開いて「いいよね?」って聞こえたかと思えば、すぐさま月島君の顔がぬぅっと近付いてきて、何かを考える暇もなく、何かを言う暇もなく、僕のファーストキスは奪われてしまった。

「…っんぅ」
「…正ちゃん、その顔やばい」
「ちょっ…、ちょっと待っ…」

軽く触れた唇。月島君の唇は温かくて、凄くドキドキした。…あ、やばい、途端に僕の下半身が反応しちゃったよ……っていうか、何だか月島君の様子もおかしい。なんか雄っていうか狼っていうか、そんな感じに見えてやばいと思った僕は、手で月島君の肩を押して制した。

僕のそんな反応に驚いたように目を真ん丸くした月島君は、大人しく僕を見遣って、僕からの言葉を待ってくれる。

「えっ…と、これ、どういうこと…なの…?」

搾り出したように小さく紡いだ僕の言葉は、月島君に大きな衝撃を与えてしまったらしい。
……それと同時に、…僕にもとんでもない衝撃が走ったんだけど……






「え?正ちゃん、俺ら、付き合ってるんだよね?」
「…え?…僕達、付き合ってたの…?」





---fin---





ありす様よりリクエスト頂いた「人気者×内気平凡」です。月島君はまさか「僕達付き合ってたの?」となるなんて思ってもみなかったんじゃあないでしょうか。いや逆も然りですね。互いに勘違いが解けたことだし二人はこれから思う存分にラブラブいちゃいちゃすればいいと思います(^q^)ありす様、リクエストありがとうございました!




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