05
そんな昼過ぎ、優がDVDを見たいというので、近所の某TSUTA○まで足を運んだ。
「にぃ、僕これ見たい!」
そう言って優が指差したDVDは、最近流行の、着信があったりなかったりするっていう邦画の怖いやつだった。
「ゆーうー。大丈夫かぁ?こんなの観て。夜眠れなくなっても知らないぞ?」
「だっ、大丈夫だもん!僕、怖くなんかならないよ!」
「そうかそうか。じゃあ借りようなー?じゃあ俺は、夜中にちょっと遊びに出ようかなーっ」
「えっ!駄目駄目っ!一緒にこれ観て、夜はちゃんと、にぃも家に居るのっ!」
頬を膨らます優が可愛い。愛しい。
「はいはい。じゃこれと、あとは何か借りるか?」
「んーん。これだけでいい」
「分かった。じゃ借りて来るから待ってな?」
「うんっ!」
そうして、ホラーDVDを借り、スーパーで夕食の食材を買い、帰宅。
夕食は豪華に惣菜オンリー。エビフライとか、ハンバーグとか優が好きなものばっかり買って、仲良くチンして食べた。
「にぃ、あれ見よーよーあれ!」
と、借りてきたDVDを手にソファーに座って夕食後の缶ビールを飲んで一息ついていた俺の隣に優が座ってくる。
持っていた缶をテーブルに置き、なんとなく優の頭をぽんぽんと叩きながら、
「お、観るか。じゃあ優、セットしてくれるか?」
「うん!」
32型のデジタルテレビの前で、優と並んで体育座りをしてホラー映画を観る。
なにやら優がやっぱり怖そうにしているので、そっと優の肩に手をかけてこちらに引き寄せると、優は俺を見上げてへへ、と笑う。
「にぃは怖くない?」
「優がいるからな」
満足そうにまたニッ、と笑うと再びテレビに向かい、恐怖映像に頭を切り替えたようだ。
2時間弱の映画を観終わり、ふぅ、と息を吐いてテーブルの上のジュースやらお菓子やらを片付けようと立ち上がろうとした時だった。徐に優が俺の上着の裾を掴み、
「…にぃ」
と上目遣いでこちらを見てきた。
え!なに可愛い。その上目遣いは反則だ。お兄ちゃん、襲いたくなっちゃうぞっ。って、洒落にならないな。
まさかやっぱり優は怖くなっちゃったのかな、もしかして怖いから一緒にお風呂入ろうとか言ってくれるかな、そしてその流れで一緒にベッドイン!…なんつー神展開にならないかなー…
「どうした、優?」
「にぃ……」
「ん?」
「………………今日はしょうがないから、にぃと一緒にお風呂に入ったげる」
そうボソッと言って、恥ずかしいのか俺の足にぎゅっ、としがみついて顔を隠している。
かかかかかか可愛い!
もう、お兄ちゃん、今日だけじゃなくて毎日お風呂一緒がいいな。優の全身を隈なく洗ってあげるぞ。
と心の中であらぬ想像を一瞬で繰り広げ、下半身が徐々に布を押し上げている事を、弟は知らない。
そして俺の内部からふつふつと沸き上がってくる顔のニヤニヤをなんとか隠し、懸命に取り繕って俺は
「そうだな、じゃあ今日の風呂は一緒に入ろうか」
「うん!」
…そんなキラキラした目で俺を見るな優。俺、冷静でいられるかな。…自信がない。
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