04




俺達の助けを求める声が虚しく図書室に響いてから約二分後。俺は半ば諦め気味な気持ちでいた。


「和哉…お前何でそんなに冷静なの?つか、何で笑ってんの?」

「だって、翔が来てくれたからっ」


本棚の床に胡座(あぐら)をかいて座ると、和哉は体育座りで俺の隣にちょこんと寄り添ってきた。和哉の性格上、こんな状況に陥ったらもっと騒ぎ出すかと思ったんだけど、どうやら違ったようだ。


「なんかさぁ?翔」

「ん?」

「王子様みたいだね!」

「…は?」

「白馬の王子様だよ!知らないの?」

「や、知ってっけど…」

「僕のピンチに颯爽と現れる白馬の王子様、みたいな?」

「いやいやいやいや。お前楽観的に考えすぎだから」

「うー…」

「もうちょっと危機感覚えろ?な?」


口を一文字に閉じコクコクと頷く和哉の髪をくしゃっと撫でそのまま二人寄り添う。あぁ、何か幸せだ。…って、いやいや今はそんな事言ってる場合じゃないんだった。


「…な、和哉。そういやお前何読んでたの?」

「っえ!…えとえと…」


ふと俺が問うた瞬間、和哉が持っていた本を後ろに隠すのを俺は見逃さなかった。和哉に覆い被さり、半ば無理矢理にその本を奪い取ってみると、そこには『おとこのからだ』と書いてあった。そんな本で勉強になるのかどうかは、今は考えなくてもいいか。


「また調べてた?」

「…えへへ」


和哉は照れるように笑い少し目線を逸らす。俺は何だかたまらなくなって、和哉の顎に手をかけてキスをした。


「…っん…」


和哉もそれを受け入れ、目を閉じ何度も唇を寄せ合う。


「…っは…」


薄く開かれた和哉のその口内にゆっくり舌を捩込む。相手の舌と舌を絡め合わせ、歯の裏をなぞる。目を少し開けて和哉を見れば、ほんのり紅く染まった頬と艶(なま)めかしいその表情に異様に興奮した。


「…なぁ、和哉…」

「しょう…」


自然と二人は見つめ合う。ここが学校の図書室で、今俺達は閉じ込められていて緊急事態なんだって事はもう頭に無かった。
ただ、和哉が欲しい。繋がりたい、一つになりたい。…理性は利かなかった。


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