03
図書室に着きました。というか今図書室の前なんだけど、ドアに『閉まってるにょん』とかいうふざけた立て札が掛かっています。
あれ?もう和哉も帰っちゃったのか?…あぁ、もう完全下校時刻なのか…………
――ガラガラ、
ってアレ?ドア開いたけども。誰か居んのか?
「すいませーん!誰か居ないっすかー?」
図書室の中に入ってドアを閉め、少し声を張り上げて問い掛ける。が、返事は無い。
無人の図書室。外から聞こえるザワザワとした風の音と、窓からうっすら差してくる夕焼けの明かりが、何か奇妙な恐さを感じさせる。
「か、和哉…?」
恐る恐る足を踏み入れながら、もしかしたらまだ和哉が居るんじゃないかという淡い期待を込めつつ声を出し、そのままゆっくりと本棚まで歩き進む。
――――居た。
一番奥の本棚の床に座り込み、本を片手にコクリコクリと眠り込んでいる和哉の姿がそこにはあった。
「ちょ、和哉?」
側まで行き、和哉の肩を揺らす。間もなく和哉はゆっくりと目を開けて、寝ぼけ眼(まなこ)の目でこちらを見る。
「ん…あ、翔……」
「お前、何でこんな所で寝てんだよ?有り得ないぞ?」
「何だか…眠くて…」
目を擦りながら、むにゃむにゃと欠伸をしてみせる。こいつ…人の事「どこでも寝れる人なの?」とか馬鹿にしてたくせに、自分だってしっかり図書室なんて眠りこけてんじゃねぇか。
「…ったく。ドア閉められてたぞ?鍵とか閉められてたらどうするつもりだったんだよ?」
「んぁ…え、もうそんな時間なの…?」
「下校時刻とっくに過ぎてんぞ!ほら、帰るぞ」
俺がそう言って、和哉に手を差し出したその時だった。
―――ガチャ。
図書室の入口の鍵を確かにかける音が聞こえた。俺も和哉もハッとし一瞬で事の重大さに気付き、俺はとりあえず全力を挙げてドアまでダッシュした。
「ちょ、おい!まだ人いるから!誰か!?せんせーっ?!」
ドアを叩きながら叫んでみるも、もう遅かったらしい。
外は既に日が落ちて、図書室の中は異様に暗くなっていた。
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