02
それからというもの俺は、悶々としていた。いやぁ本当に、悶々としていた。
和哉があんな事言うもんだから、あれからもまたネットで調べたりもしたし、夜のオカズが和哉の下半身シーンから挿入シーンに変わった。いや、これは勿論想像だが。
なのにあいつ…。あれから一週間も経つっていうのに、その話題に全く触れて来ないってのはどういう事なんだろうか。
「翔ー!ごめんっ!今日ちょっと図書室に寄らなくちゃいけないから、先帰っててー!」
放課後、「よしっ、帰んべー」といつものように和哉の席まで行くと、それを拒否するこんな言葉をかけられ、やっぱり俺の返事も聞かない内に彼は颯爽と教室から出て行ってしまった。
「っ、はぁ?」
思わず口から出てしまう。
するとその様子を近くで見ていた同級生A(赤坂君)が
「ははっ、おめー、桜田に振られてやんのっ!」
ゲラゲラと笑いながら俺の背中をバシバシ叩く。…ちょ、うざい…うざい赤坂。
「…っせーんだよ赤坂!」
「つかお前らってマジ仲良いよなー?」
俺のお返しとばかりの片手チョップをサラリと避け、和哉の机に座りながら言う。つか、和哉の机に座んじゃねーよ。赤坂おい。
「だって俺と和哉付き合ってっし」
「ははははっ!ウケる!それ良いねー!!ははははは!」
やっぱり冗談にしか受け取られないよな。いや、そのつもりで言ったし、マジに受け取られたりしたら困るんだけどさ。
「んじゃ、一緒帰んね?マック寄ろーぜー」
「あ?や、ちょっと和哉待ってるわ。赤坂みたいなもんは勝手に一人で帰ってろ」
「いやん、翔冷たい〜!」
「うっせ、早く帰れ!」
しっしっ、と手を振ると赤坂は「なんだよー」などとぶつぶつ言いながら一人で教室から出て行った。
チラリと赤坂を目で追うと、廊下に居たあまり仲良くもない生徒に「一緒帰んね?」と誘っては尽(ことごと)く断られていた。
赤坂の奴馬鹿だなーなんて思いつつ、和哉の席に腰掛ける。
「はぁ…」
ふと、溜息が漏れた。
俺が今座ってる和哉の席にはいつも和哉が座ってて、授業受けたり本を読んだり皆と喋ったりしてるんだよなぁ…。
そう思うととてつもなく和哉の事が恋しくなって、机に頬を付けて目を閉じる。
――何分間くらい、そうしていたのだろう。頭の中に受かんでくるのは、ははっと思いっ切り笑う和哉、怒って頬を膨らます和哉、すねて後ろを向く和哉、照れながらはにかむ和哉、キスする時目を閉じる瞬間の和哉…。
……和哉、ばっかりだ。
本当に俺は、いつの間にかこんなにも和哉の事が大好きで、和哉が居ない放課後はこんなにもつまらないんだな。…あいつ、図書室に行くとか言ってたっけ。
俺は、和哉に会いに行く事にした。
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