01
「ねぇねぇ、翔?」
「あ?」
「えっち、しない?」
――いつもと同じ学校帰りの道中、もうそこには和哉の家が見えており、あと少しで和哉と別れなければいけないという今まさにその時。俺はコンビニで買った紙パックのコーヒー牛乳をプーっと吹き出しそうになった。
「…お、おう…ななななな何で急にそんな事」
「あのね、僕、色々調べたんだけど、男同士でもえっち出来るんだって!それでねそれでねっ」
「ちょちょちょちょっと待て」
「何?」
目をキラキラさせながら話し出そうとする和哉を制して、持っていた紙パックを渡す。
渡されたコーヒー牛乳を、頭に「?」を抱えながらも一口飲み、俺をじっと見つめる和哉。
「まず、こんな往来でそんな事を言うもんじゃない」
「大丈夫だよー!こんな話してたって誰かが聞いてる訳じゃないし、まさか僕達本人の事なんて誰も思わないよ!」
「ん?ん〜…」
和哉の手からコーヒー牛乳を奪い、ストローをくわえながら考え込む。俺の考え過ぎなのか…?んん…でも……
「翔は、僕と、したくない?」
バカ。したいに決まってる。
お前と付き合う前から、いつの間にか夜のズリネタはAVなんかじゃなくお前になってたんだぞ?
ましてや付き合うようになって、和哉の体温とか、唇とか、身体…とか。想像だけじゃなく本当に感じられるようになってからは、毎晩お前で………ゴホン。
「そっ、そりゃあ、したい」
「えへへ。知ーってるっ」
そう言って意地悪な笑顔を見せる和哉。この憎らしい顔がとてつもなく可愛い。…天然でその笑顔をしてるのか?天然タラシなのか?クソッ、可愛過ぎる。
「じゃ、また明日ね!」
そう言って和哉は俺の返事を言う間も与えずに、そのまま手をひらひらと振り颯爽と自宅の門の中に入っていく。
「え…お、おう…」
何だか取り残された気分というか、何というか。和哉のやつ。なんだかんだ言って色々調べてたのか…。俺に「えっちしない?」ってわざわざ聞いて来るって事は、今までしてた事よりもっと先。所謂・・・って事だよな?
その実俺も、その手の事は既に色々と調べていたりする。男同士のSEXは、その…男女平等についている尻の…あの…その………まぁ、色々調べてはあるんだ、俺も。
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