17



今まで生きてきた中で、1番濃かった…そんな日の夜中。


「翔。寝る前にここ片付けて、歯磨きもまだでしょ!ほら、横にならないっ!」

いつもの和哉だ。いちいち細かくて、真面目で、口煩(うるさ)い。
そんな和哉を手招きして、近付いて来る彼にチュ、と軽くキスをする。

「〜!っもう!」

恥ずかしいそうにしながら、パッと俺から離れて一人で部屋の片付けを始める。
そんな彼をニヤニヤしながら見ている今が、とても幸せだ。


「翔!ごまかさないでよっ。ちゃんと手伝って!」

「はいはい。今やりますよー」

ヨイショ、と横になっている態勢から体を起き上がらせた。




――数日後
連休も終わり、またいつものように学校と家の往復の毎日だ。
しかし!今の俺には大事な恋人が居る。得てして日々の生活もきらびやかにみえるというものだ。


「翔!おーはよっ!」

校門前で俺の恋人、和哉が俺に声を掛けてくる。キスでもしてやりたい気持ちでいっぱいだが、ここは学校の校門前だ。勿論、俺達が付き合っている事など誰にも言える訳がない。


「あ、はよ」

「急がないともう予鈴鳴るよ!ほら走って!あ、でも廊下は走っちゃ駄目だった!」

「おま…どっちだよ」

へへ、と頭をかく和哉が可愛くて仕方ない。抱きしめたい。
いつの間に、こんなに和哉が可愛く見えるようになったのだろうか。

クソ真面目で、いちいち細かくて、"ど"が付く程の天然で。…ちょっと前まではただの親友だったのにな。

俺はこれから先、ずっと和哉を大事にしていく。



―それにはまだ、やらなきゃいけない事があったんだ。



「…あの…黒川…先輩…?」

急に俺に呼び出され、おどおどした様子で俺を見つめる女の子。
そう。俺に告白してきた、美紀ちゃんだ。


「あー…」

バツが悪そうに頭をかきながら俺は勇気を振り絞った。自分を好きになってくれた子をきちんと振る、って意外に勇気がいるもんなんだな。


「わ…悪いんだけど…」

「……」

「俺…大事な人が出来たんだ」

「…え…」

驚いて目を見開き、今にも泣き出しそうな顔をする彼女。


「ん…、だから、ごめん!美紀ちゃんの気持ちには、応えられない」

「…っ」

彼女の目に涙が溜まっているのが分かる。しかし彼女はハッキリとした声でこう続ける。


「…分かりました…ちゃんと…ちゃんと言ってくれて………あっ…ありがとうございます…っ」

「…ん…、美紀ちゃん、こんな俺を好きになってくれて、ありがとな?」

「はい…っ!」

目から涙を流しながらも、精一杯の笑顔を俺に向ける。

…ありがとう。
そして、ごめん。

心からそう思いながら、美紀ちゃんに背を向け歩き出す。すると後ろから美紀ちゃんが


「黒川…先輩…!し、幸せになって…下さい…っ!」



…俺は振り向かずに手だけを上に上げ、ひらひらと振った。




「かーずやっ」

「な、なに?急に」

その日の放課後俺んちで勉強会をしている最中、ふと和哉を後ろから抱きしめた。和哉の匂い、肌の温もり、本当に安心する。

…大好きだ、和哉。


「んーん。なんとなく。こうしてたいだけ」

「そ?んー…」


少し上機嫌らしい和哉が、俺に背中を預けるように寄りかかってきた。

…和哉。

俺は本当に、心からお前が大好きなんだ。





---fin---




あ と が き

一応これで本編は終わりです。本編というか二人が結ばれるまでという感じですかね。
次ページからは番外編になります!


ここまでお読み下さってありがとうございました!よろしければ、ぽちっと押して頂けると嬉しいです。

→番外編★

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