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とりあえず和哉の言い分は、ファーストキスを奪った責任をとって欲しい。そして、俺のファーストキスも奪ったのだから責任をとるつもりでいる、と。

こういう事らしい。

和哉も酔いは醒めたのか、もうはっきりとした口調、いつもの口調に戻っていた。


「…だから、責任をとるべきだと思うんだ。」

「うん?その前にな、和哉。まず、俺達は男同士だ。そこはお前の常識的には問題ないのか?」

そう俺が聞いた瞬間、和哉がハッと何かを思い出したような顔をして、慌てて俺にこう言ってきた。


「翔!!!!」

「…何?」


…もしかして。


「そういえば、翔、好きな人いるんじゃなかったの?ちょ、ちょ、ちょっと待って!」

…やっぱり。今日の放課後みんなでだべってる時に俺が「好きな奴がいる」って言った言葉、和哉ならしっかり覚えてると思った。


和哉は自分の口を押さえ、目を見開いて慌てている。


「だっ…駄目じゃないか!!すっ…好きな人…が…いる…のに……よりによって…僕なんかに……っ」


和哉の目からはじわじわと涙が溢れてくる。


「ぼっ…僕は……僕は…」


涙をポロポロ零しながら、和哉は


「…翔のこと…っ」

「ちょっと待て!落ち着け!…俺にも、話す間を与えろ。」


和哉の肩を掴み話を遮って、相手の顔を見ながら俺は、本当は今日ちゃんと話そうと思っていた事を話し始めた。


「まずな、隠しておくつもりなんて無かったんだけど、確かに、あのコには告られた。」

「うん…。」

「でも、別にあのコに興味も無かったし、好きになれそうにもない。」

「うん…?」

「俺は、最近…、何でかは分からんが、気になる…んだ」

「…?なにが?」

「…か…和哉の事が」

「…!」

「だから…さっきも…その……酔ってたとはいえ…キス…とか…ごめん!マジ、ごめん。」


俺は両手を顔の前で合わせ、頭を下げた。
すると和哉は、俺の手を取ってぎゅっと握った。


「和哉…?」

「僕はね、もう結構前から、多分翔の事好きになってたんだと思う。だから今日…あんな事になって……………
…………もう…僕は翔に責任取ってもらうまで、この手を離さないから…っ…!」


ぎゅっと握られた手に力が込められる。
和哉の顔は恥ずかしさからか紅色に染まっており、わなわなと震えているのが分かる。


俺は和哉に顔を近付けて、頬に軽くキスをする。



何故キスしたのかと聞かれれば、"和哉にオトされたから"としか答えようがない。


ただ、俺はもう、目の前に居る親友のこいつが、堪らなく愛しく思えてならなかった。



「責任、取ってやるよ」

「翔…っ!」


握られた手が解かれ、代わりにがばっと抱き着かれる。


「翔っ…!翔っ…!」


縋(すが)るように抱き着かれ、俺の胸に顔を押し付けている和哉の頭を撫でながら、俺は心が満たされていくのをひしひしと感じていた。


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