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2時間程経っただろうか。
今、俺の頭は朦朧としている。久しぶりにこんなに酔ったな。
「…ヒック、しょ、しょう」
「んー…」
こんなやりとりをしながら今、何故か俺と和哉は肩を寄せ合い頭がくっつく程近くにいる。
アルコールの匂いと、和哉の匂いが混ざった匂いがする。
ふと、和哉の方に向いて髪に鼻をあてれば、シャンプーの良い匂いがしてくる。
「翔っ…何してんのさ…くすぐったい…」
和哉が身体を揺らし、本当にくすぐったいのか酔っているだけなのか、へらへらと笑う。
独特な、異様な空気が流れる。
俺は…この空気に流されてしまって、良いのだろうか。
「和哉…」
和哉の横髪をかきあげて耳に掛け、そのまま耳元で囁く。
「ちょ…くすぐったいって…」
和哉は頭を左右に揺らし、俺の方を向く。
鼻がくっつく程、顔が近くにある。…キス、してぇ。
「和哉…顔…近過ぎ」
「…」
和哉が目を閉じる。
え、何で目閉じんの。これは…そういう事なのか?
やばい、頭が回らない。
「…っん」
そっと唇を寄せ、そのまま唇を重ねる。
――チュ。
「…翔」
潤んだ目で俺を見てくる。
もう、理性が効かない。俺はもう一度顔を近付け、和哉の後頭部を軽く持って自分の唇に押し当てる。
「んっ…」
「…っはぁ…翔…っ」
唇を離してはまた角度を変えて、何度も何度もキスを繰り返す。
互いに時折洩れる吐息が、また俺の理性をぶっ飛ばしていく。
「…はぁっ…はぁ…翔…僕…」
「っ…はぁ、な、何だよ…?」
ひとしきり甘いキスが続き、やっと唇が離れると和哉は、吐息混じりに何かを小さく呟く。
「初めて…」
「…ん?」
「ファースト…キス…」
「ばっ…俺もだ」
顔を真っ赤に染め、ぎゅうっと俺に抱き着いてくる。
和哉の背中に腕を回し、優しくそれに応じる様に抱きしめる。
…あれ?
いつの間にか和哉は俺の腕の中で、眠っていた。
酔った勢いってやつなのかこれは。
それにしてもタチが悪い。
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