14




2時間程経っただろうか。
今、俺の頭は朦朧としている。久しぶりにこんなに酔ったな。


「…ヒック、しょ、しょう」

「んー…」

こんなやりとりをしながら今、何故か俺と和哉は肩を寄せ合い頭がくっつく程近くにいる。

アルコールの匂いと、和哉の匂いが混ざった匂いがする。
ふと、和哉の方に向いて髪に鼻をあてれば、シャンプーの良い匂いがしてくる。


「翔っ…何してんのさ…くすぐったい…」

和哉が身体を揺らし、本当にくすぐったいのか酔っているだけなのか、へらへらと笑う。

独特な、異様な空気が流れる。
俺は…この空気に流されてしまって、良いのだろうか。


「和哉…」

和哉の横髪をかきあげて耳に掛け、そのまま耳元で囁く。


「ちょ…くすぐったいって…」

和哉は頭を左右に揺らし、俺の方を向く。
鼻がくっつく程、顔が近くにある。…キス、してぇ。


「和哉…顔…近過ぎ」

「…」

和哉が目を閉じる。
え、何で目閉じんの。これは…そういう事なのか?
やばい、頭が回らない。


「…っん」


そっと唇を寄せ、そのまま唇を重ねる。


――チュ。


「…翔」


潤んだ目で俺を見てくる。
もう、理性が効かない。俺はもう一度顔を近付け、和哉の後頭部を軽く持って自分の唇に押し当てる。


「んっ…」

「…っはぁ…翔…っ」

唇を離してはまた角度を変えて、何度も何度もキスを繰り返す。
互いに時折洩れる吐息が、また俺の理性をぶっ飛ばしていく。


「…はぁっ…はぁ…翔…僕…」

「っ…はぁ、な、何だよ…?」

ひとしきり甘いキスが続き、やっと唇が離れると和哉は、吐息混じりに何かを小さく呟く。


「初めて…」

「…ん?」

「ファースト…キス…」

「ばっ…俺もだ」

顔を真っ赤に染め、ぎゅうっと俺に抱き着いてくる。
和哉の背中に腕を回し、優しくそれに応じる様に抱きしめる。


…あれ?


いつの間にか和哉は俺の腕の中で、眠っていた。

酔った勢いってやつなのかこれは。

それにしてもタチが悪い。


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