09




学校から和哉と一緒に帰っている途中、なんだか俺から振る話題が見付からなくて俺はずっと黙っていた。


「翔!」

「ん?」

「ん、じゃない!さっきから呼んでるのに、無視しないでよっ」

「え?あぁ、わりぃ。」

「何ボーっとしてるのさ?」

「ややや、なんか暑くて!もう嫌んなるよなーははは…」

「ちょ、翔。ごまかすの下手すぎ。」

「…」

「さっきの後輩の子が、気になるの?」

「それはない」

「んー。じゃあ何?僕と約束しなきゃ、あの子と遊べたのにーとか考えてるんじゃないの?」

「ちげーって!」

「そもそも僕はさぁ、長年友達やってきた翔にあんな隠し事されたのが悲しい訳です。分かりますか?」

「は…はい…。」

「隠すような事でも無いのにさぁ?なんだよー全く。水くさいじゃないか!」


和哉が苛立ってる。久しぶりに見たな、こんなカリカリしてる和哉。
…って、俺が悪いのか。


「和哉!」

「ん?」

「今日の夜、色々話そうぜ!酒でも買ってさ!」

「あのねぇ翔くん。未成年の飲酒は法律上禁止されているし、まだ身体が発達し終わってない未成年が飲酒をするとその後の人体に多いに影響してしまうからして…」

「ちょ、ストーップ!…絶っ対それ言われると思ってたけど、ま、良いじゃん!色々買っとくからさ!」

「人の話聞いてるの?翔は。だからね、僕はふざけて言ってる訳じゃなくて」

「はいはいはい分かった。ま、そゆ事で!」

「っも〜。駄目だからね?」

「じゃ、あとで連絡すっから〜!」


俺は半ば一方的に和哉と別れて、家までの短い距離をひたすら走っていた。

そうだ、あとでコンビニ行って酒やらつまみやら買い込んで、飲みながら今までの事を全部和哉に言ってしまおう。

美紀ちゃんの事。俺の気持ち。
きっとそうやって話してるうちに、俺が和哉の事をどういう風に思ってんのかも分かる筈だ。
本人にこの事は言わないけど。

そしたら和哉も俺が色々と黙ってた事、許してくれるだろう。
タイミング良く今日はずっと和哉と一緒に居れるんだ。
ちゃんと誤解は解かないとだな!

なんだか胸につかえていたものがスッと消えた気がして、足どりも軽く家へ着き支度を始めた。


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