05




そこには、一人の女生徒がいた。
知ってる顔ではなかったが、髪の長い小柄な子で、まぁ…可愛い子だった。


「あっ…」


俺の姿に気が付くと、彼女はぽっと頬を赤らめた。余程緊張しているらしい事が窺い知れる。


「っと…これ、くれたのキミ?」

「あっ…は、ハイ!…」

「…」

「…」


屋上のフェンスによっ掛かり、貰った手紙を手に俺は彼女を見つめる。


「あの、1年の小泉美紀と言います。あのあの、黒川先輩っ…」

「は、はい…」

「ずっと前から、好きでした…!」

「…!」

「良かったら、あの、友達からで…良いんで、あの…仲良く…して…貰えたら……」

「…」


こんな感じに告白されたのなんて初めてだ。こっちまで緊張してしまう。


「あの…黒川先輩…?」

「あぁ…。うん、ありがとう。美紀ちゃんの気持ち、嬉しいよ。でも、俺はまだ美紀ちゃんの事何も知らないし、友達からで良ければ」

「…!…はいっ!」


正直、あまり乗り気では無かった。だが、真剣に告白してくれた彼女を邪険には出来なかった。
ま、好意を寄せられて悪い気はしないしな。

そんな感じで俺は、美紀ちゃんと赤外線でアドレスを交換してから、屋上を後にした。



普通なら、これから毎晩メールして、たまに電話したりして、2人で遊ぶようになって、付き合う、という流れになるのだろう。

しかし俺は、本当に気持ちが乗らなかった。いや、美紀ちゃんは良い子そうだし、可愛いし、性格はまだ知らないけど…普段の俺ならば何の問題も無く、段取り踏んで付き合ったのだろう。

でも何だ?この感じは…
よく、分からない。

そんな事を考えながら帰路についていると、後ろからポンッと肩を叩かれた。
もしやと思って振り向くと、やっぱり和哉だった。


「しょーうっ」

「おまっ、何でまだここいんだよ」

「いや?暇だからそこのマックで本読んでたんだけど、翔が見えたからさ。僕を先に帰らせた割に早いじゃん?」

「あぁ…まぁ、な」

「ふーん?」


それから、たわいもない話をしながら一緒に帰った。俺と和哉は家が近いから、ほぼ家まで一緒だ。


「あ!そうだ、翔!明日金曜でしょ?一緒に宿題やらない?僕の家でさ。」

「おー、やるやる、というか、宿題写させてくれ!」

「うん〜知ってるよ?でも、写させはしないけどね。ちゃんと自分でやらなきゃ、自分の力にならないでしょ?」

「言うと思った…」

「やる?やらない?」

「やります…教えて下さい…」

「うん。明日の夜はね、両親もいないから泊まってっても良いから!あ、でも泊まるなら翔の親御さんに許可取らないとだけど」

「許可って…俺はいくつのコだよ」

「へ?息子の無断外泊を喜ぶ親なんていないでしょ?」

「や、無断外泊する気はねぇし…親にゃ言っとくからさ、それで良いだろ?」

「うん!じゃ、また明日!」


俺は、和哉と気まずいとか、そんな和哉と泊まりという障害よりも、宿題を教えて貰えるという利点を選んでしまった。

そんな気まずさの原因の奴から勉強を教わるなんて、本末転倒なんじゃないのか?
いや、今はその事は考えないようにしよう。

実際、和哉んちに泊まりなんて久しぶりで浮足立ってる自分がいる事は否定出来ないのだから。


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