09
「ゆーう。もう眠いか?」
「んーん。まだ眠くない」
「そうか。じゃあ何しようか。…久しぶりにいっぱいお話しようか?」
「うん!にぃとお話する!」
そんな訳で俺と優は、俺のベッドで一緒に横になりながら他愛もない話を繰り広げていた。
「でーえ?優はクラスに好きなコとかいるのかな〜?」
…我ながら勇気のいる質問をしてしまった…!後 悔…!
頼む優!好きな人なんかいない、むしろお兄ちゃんが大好きだと言ってくれ!!
「えっ、い、いないよ!」
いないのか!よかった…!
でもなんか歯切れが悪いなぁ。クラスに好きな人はいないけど、別のクラスにはいる…のかな。かなりショックだ…。
でも仕方ない…か。なんとかこの沈んだ気持ちを悟られないように平然を装って俺は、
「本当かあ〜?」
と返すのがやっとだった。
「…うん。でも、好きな人ならいる」
「えっ…。そ、そっか!そうだよな!んで、誰なんだ?その、好きな人は」
俺はショックのあまり卒倒しそうになったが、ここはなんとか堪えて、優の頭をぽんぽんと撫でながらそう聞いた。
すると優は、横向きに寝ていた俺を急に仰向けに倒し、俺の上に乗っかりながらこう言ったのだ。
「僕…お兄ちゃんが、すき」
俺は、何が何やら分からなくなっていた。優の好きな人が俺?そそそそんな馬鹿な。
……お兄ちゃんだから、家族として好きってのなら分かる。
でも、今はそういう風な話の流れではなかったし、優だってそれ位の空気は読める出来た弟だ。
そんな出来た弟、優が本気で俺に告白してくれているこの状況。
俺が固まったまま何も話せないでいると、優は俺に乗っかったまま、体をゆさゆさ揺らし
「にぃ?…にぃは僕のこと、きらいなの?」
ちょ、あんまり俺の上で揺れてくれるな優よ。優が座ってる尻の部分が、丁度俺の股間にジャストフィットしてるから…!
って、今はそれどころじゃない。とりあえず、告白の真意を聞かないと。
「ゆ、優?優は、俺がお兄ちゃんだから、お兄ちゃんとして好きって言ってくれたんだよな?」
「…違うもんっ!にぃは、お兄ちゃんで、お兄ちゃんとしても大好きだけど、僕、ずっと、にぃの事しか見てなかった。にぃを本気で好きなんだよ?」
そう言って優は真剣に俺を見つめている。
信じて、いいんだよな…?
…俺は、嬉しさのあまり涙が零れてしまった。
俺の頬を流れてくるその粒を、優が指で掬って舐めてくれた。
「にぃ…?何で泣いてるの…?」
「優…おっ、俺…。う、嬉しく…てっ…」
今やボロボロと溢れんばかりの涙を流しながら、必死にそう伝える。
すると優は優しい笑みをこちらに向けて、俺の頬にちゅ、と軽いキスを落とす。
「にぃ…。好き…」
優のほんのり紅く染まった頬が愛くるしい。…初めてのキスを俺にしてくれた。…嬉しい。
俺は思わずぎゅっと優を抱きしめ耳元で小さく囁いた。
「優。お兄ちゃんも、優が大好きだよ」
優は俺にしがみつき、力強くぎゅっと抱きしめ返してくれた。
この瞬間、絶対誰にも言えない二人だけの秘密が出来た。
俺と優は、晴れて恋人同士になったのだ。
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