※現パロ
「ねえ、機嫌なおしなよ」
「別に機嫌悪くなんかないもん」
「悪いよ」
「うるさい悪くない」
「あーわがまま」
お 前 も な 。
喉まで出た言葉は飲み込んだ。今日は日曜日、総司と久々に会える日で、私はとても楽しみにしていた。けれど当の本人は寝坊をして夕方まで連絡が取れない有り様。ようやく起きたらしい総司が夕方、私のアパートまでやってきて今に至る。
「僕だってわざとじゃないんだよ?名前ちゃんと会うの昨日から楽しみだったし」
「別にそんなん聞きたいわけじゃない」
「じゃあなんなの?ぎゅーって抱きしめてあげたら機嫌なおるの?」
「…」
「ぎゅーって抱きしめてちゅーして、名前ちゃんかわいいーだいすきーって言ったら許してくれるの?」
「言ってて恥ずかしくない?」
「べつに」
話は平行線を辿る。本当に、私は、別に怒っているわけではないのだ。総司も仕事で疲れているし、寝坊だってするだろう。単に、総司はその逆だったら私をめちゃめちゃにいたぶるくせに現在奴は飄々としているのが気に入らなかったりする。
「ねえー」
「やだ、さわんないで。むかつく。」
「…へえ、そんなこと言うんだ」
手を伸ばしてきた総司の手を払いのけると、とうとう本当に気を悪くしたらしい。元々彼は我慢強くないし、優しくもない。わがままに手足が生えたような奴だ。一気に仏頂面になる。
「ふーん、わかった。じゃあもう名前ちゃんには触らない」
「え」
それからの総司は同じ部屋にいるのに不自然なほど私から距離を取り、絶対に触れることはしなかった。しかしそうすることで互いのストレスが更に積もる。
「ねえ」
「なに」
「私触るなとは言ったけど離れろとは言ってないよ」
「近寄る必要もないじゃない」
「そうですね」
「ねえ」
「なに」
「機嫌なおせば」
「名前ちゃんが謝ったらね」
「え、私が謝るの」
「意地はってごめんなさい総司にぎゅーされてちゅーされてかわいいーだいすきーって言われたいですって」
「言ってて恥ずかしくないの」
「何その言い方。もう話しかけないで」
「ねえ」
「………」
「何なの僕を無視するの」
「…」
「話しかけないでとは言ったよ。話すなとは言ってないから」
「…」
「あーあ名前ちゃんって本当子供だなあ」
「(お前もな!)」
「ねえ」
「…」
「僕もう我慢できないんだけど」
「…」
私ももう、意地をはるのも疲れたし、総司と話したいし、この喧嘩を終わりにしたい。しかし急に素直になれるはずもなく。
「…別に触っていいよ」
「え?誘ってる?」
「ちがう!私から寄ってくのは癪だから言ってんの!」
「はは、仕方ないなあ」
総司が私の前に座る。何だか随分久々のような気がした。…しかし本当に、前に座るだけである。
「どうしたの?その顔」
「…え、いや」
いつもなら正にぎゅーってされてちゅーされているはずなのに(恥ずかしい台詞だよ総司のばかやろう)目の前の彼は座るだけ。
「僕から名前ちゃんに触るのも癪だなあ」
「え」
「ね。名前ちゃん」
ね。じゃねえよと心で叫んでも奴に届くはずもなく。痺れを切らした私は総司の胸に勢いよく飛び込んだ。すると総司から遂にぎゅーでちゅーである。これ、すきだ。
「今日は遅刻してごめんね」
「総司って謝れたんだね。…私も意地はってごめん」
「名前ちゃんかわいいーだいすきー」
「総司って本当恥ずかしいよね」
「そうかな」
喧嘩をしたらお腹がすいた。日も暮れてすっかり夜だし、仲直りが済んだら何かあったかいものでも作ろう。喧嘩はしないように努めながら。
まだ許してあげられる
―――――――
最初のテーマはツンツンの彼女と包容力のある沖田さんだったのに、気づけば少し口の悪い彼女とガキっぽい沖田さんになっていた
やっこ