※フリーダム。どんな設定でも許せる方のみどうぞ。







 自分の下に跪く翔を見て思う。これからこの綺麗な子にされるのか、と。
 可哀相だとは思った。自分より年下だろうに、お礼と言ってすることがこれだと。この小さな体でどれだけのことを受け止めてきたのかと思うと自然と顔が歪む。そもそも何故AV男優になんてなったのだろう。
「ん……集中、してる?」
「…………はい」
 那月がぼんやり考えてる間に翔はジッパーを下げて少し反応している那月の性器を下着から取り出していた。
 欲情した瞳で性器を見つめる翔は、先ほどの可愛らしい姿から一変大人っぽい表情を見せた。そんな翔にごくりと唾を飲む。
 赤い舌が、ゆっくりと那月の性器に触れた。
「ふ、む……」
 ペロ、と先端を舐めてから亀頭をくわえられる。温かい咥内に包まれて那月は少し身じろいだ。そのまま、上下にゆっくりと口を動かす翔に連れて那月の性器は頭をもたげる。
 ――気持ちいい。
 素直に、そう感じた。小さく可愛らしい口が一生懸命に性器をくわえる姿はとても不釣り合いでそれでいて那月をとても煽った。
「ん、ふぅ……む」
 そしてわざとだろうか。たまに歯が当たるのがとても可愛い。くわえきれない根元の部分は手で扱いて先端に舌を押し付けられて、じゅぷじゅぷ音を立てられれば欲を抑え切れなくて那月は翔の頭に手を添えた。
「ごめ……なさい」
「んっ! んん……っくぅ」
 無理矢理頭を押し込んで喉の奥深くまで性器を突っ込んだ。喉の奥に当たる感覚が恐ろしいほど気持ちいい。苦しげに眉を寄せて目尻に涙を溜める顔は、演技なのか本当に苦しいのかわからなかった。
「翔、くん……っ出ます」
「んんん、ん――!」
 声を合図に那月は勢いよく射精した。翔は口を離さずに那月の精液を全て受け止めて、ゴクンと飲み込む。
「っ翔くん、飲み込まなくても」
「ん……那月の、おいしい」
「…………!」
 上目遣いで見上げられてそんなことを言われて、出したばかりだと言うのにまた熱が上がるのがわかった。たまらず腕を引っ張って持ち上げる。翔の腰を抱き寄せて、キスをした。
「ん、……」
「苦い、だろ」
「……はい」
「でも俺この味好きなんだ。もっとちょうだい」
 とさり、無抵抗にベッドに押し倒された。
「触って……?」
 耳元で囁かれる。
 ――ああだめだ、どうしようもない。自分はこんなに欲に忠実な人間だったろうか。
 位置が逆転して那月が翔を押し倒したような体制になる。
 ――組み敷いている。このきれいなひとを。
「なにしてもいいよ。お礼だから」
「……なんで、今日会ったばかりの僕に心を許すんですか」
「許すもなにも、これは礼だよ」
「ほかになにか浮かばないんですか」
「……これしか、浮かばなかった」
 俺にできるのはこれくらいだから。そう言う翔にずきりと胸が痛んだ。お礼だから、とここで翔を抱いていいのだろうか。那月の中に戸惑いが生じる。きっと触れれば、今までしてきた男性に対しての反応と同じようにされるのだろう。どんな小さな動きにも反応して可愛らしい声を上げて。
 ――違う。僕は彼に、演技なんてさせたくない。
「……那月?」
「あなたは、なんでAV男優になったんですか」
「……どうしていきなりそんなこと聞いてくるんだよ」
「気になった、から」
 翔は目を逸らして黙り込んだ。いけないことを、聞いてしまっただろうか。
「答えたくないなら、いいです」
「…………ああ」
 知りたい。そう思ったけど無理矢理語らせたくもない。断られるとおとなしく引き下がって那月は翔の上から離れた。そんな姿をぽかんとした顔で見る翔。触れてこないのか、と。
「翔くん」
「あ……?」
「お礼なら、ありがとうって言っていただくだけで充分ですよ。それにあのようなことをしてもらってそれ以上を望むなんて、欲深くて情けない気がして」
 目を真ん丸にした翔は那月の言葉に苦笑いして、上半身を起こして言った。
「……ありがとう」
 結局、二人はなにもせずバラバラにシャワーを浴びてベッドに入った。一つしかないからと一緒に寝たけど抱きしめるくらいはいいだろうと翔の背中に腕を回す。翔は、甘えるように那月に擦り寄ってゆっくり瞼を下ろした。



 朝、起きると翔はいなかった。ベッドサイドのテーブルには一枚の紙切れ。
「……ありがとう、来栖翔より」
 来栖翔。彼は本名で活動していると言った。那月はすぐにノートパソコンを開いて彼を調べた。
 ――年齢、AV男優になるまでの経緯、調べれば全て出た。やはり自分より年下だ。そして、AV男優になった経緯はとても悲しいものだった。元は自分と同じ俳優を目指していたらしい。しかしある時、事務所の後輩がAV男優に回されそうになった時があった。翔は後輩を庇うとその代わりに自分がAV男優をすることになってしまい、こっちの方面ど活動することになったようだ。
 彼が俳優だったらいつか同じ場で会っていたかもしれない。なんて、酷い話だろう。翔の事務所は悪い噂しかないところだった。どうにかして、助けることはできないだろうか。男の相手をさせられて、あんな厄介な追っかけがついてしまった彼のためにできることはないだろうか。自分がもっと有名になったら――。
 那月はいつかまた彼に会う時、彼の笑顔がみたいと思った。そして昨日の一夜で好きになった彼に思いを告げて、うまくいったとして、体を重ねるようになったら演技じゃない彼を見たいと思う。










「おはようございます」
 ミーンミーン。蝉の鳴き声が響く森。今日はここで主人公と友人が運命的な出会いを果たすという大事なシーンの撮影がある。那月は一番早く現場入りしていた。
 暑い暑い夏だ。あれから、何度目の夏だろうか。
「那月!」
 胸いっぱいに自然の空気を吸い込んでいたら後ろから名前を呼ばれる。那月は口角を上げた。
「翔ちゃん」
 振り向いた先に、絶好の笑顔で那月に手を振る翔がいた。







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