ナイトレイ&アベル





考えたことがなかったわけではない。
ジンの親はどんな人間なのだろうかと。
ジンは普通の、そこらへんにいるような子供ではないことはわかっていた。
でも、それにしたって、彼を産み出した親は必ずいるはず。
名前はアレだが、本当に天使や悪魔だなんて思ったりはしなかった。

あのとき想像したのはどんな親だっただろうか?
思い出せない、いや、そもそもあのときから想像さえもできなかったのかもしれない。



そして今、その親と対峙している。

奴は親というには遥かに幼い顔立ちで、俺の知り合いに似すぎていた。



幼い、顔立ちなのだ。
実際の年齢はもっと上。
俺と同い年だった“アベル”の、じいさんの兄な訳だから、俺の二世代前。
俺は今の見た目の年齢よりも二世代以上の歳月を生きている訳だから……考えるのが嫌になってきたな。

こうやって頭の中では理解しているんだ。
でも、やっぱり見た目は若いし、“アベル”に似てるし。
ジンの親だけあってジンにもどことなく似てる。

つい最近殺しあいをした仲だったとしても、憎むことなんてできなかった。


「こっちを見るな」


バシンッと読んでいた本で顔面を叩かれた。
無意識に見てしまっていたみたいだ。そんなつもりまったくなかったのに。


「………大方、“アベル”に似てる、とか考えてたんだろ」

「よくわかったな」


それだけじゃないが、それも考えてた。
アベルの顔がむっと歪む。
しかしすぐに呆れたような顔に戻って、アベルは本に視線を落とした。


「お前が僕を見て思うことなんて、それ以外ないだろう」

「そんなことねぇだろ」

「あるだろ。というか、それ以外考えられても気持ち悪い」


アベルは表情を変えることなくそう言った。
多分、本に夢中で、思ったことをそのまま口にだしているだけだろう。
内容はなかなかにひどいものだが、口調にいつものような刺々しさがない。

こういうところは“アベル”に似ている。
何かに夢中になると、つい本音がでてしまうところが。




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