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紹介と何やら誤解している慶次に事情を説明し終わり、終始面倒臭そうな表情をしている政宗など露知らず、慶次はにこにこと笑っている。


「いやあ、いいねぇ!むさ苦しい中に紅一点の華があるってのはさ!」
「お前は本当に年中春頭でhappyだな」
「え、半被?」
「半被じゃねぇ、happyだ」
「相変わらず政宗は訳分かんない事言ってんなあ」
「テメェに言われたくねぇよ」


そう話す二人は、仲が良いんだか悪いんだかよく分からないなと悠は思ったが、傍に控える小十郎がさして気にする事なく茶を啜っているのを見て、恐らく仲が良いのだろう。もしかしたら、面倒だから間に入りたくないとかそういう事かもしれないが。
ちらっと慶次を見ると、目が合ってにこりと微笑みかけられる。同じように微笑み返すと、どたどたとこちらへ走ってくる足音が聞こえて、障子が勢いよく開いた。


「慶次さん!」
「お!成実、久しぶりだな!」
「お久しぶりです、来てたんスね!」
「成実、せめて声を掛けてから入れ。政宗様の私室だぞ」
「止めとけ、小十郎。言っても無駄だ」
「…その様ですね」


全く聞く耳を持たない成実に、小十郎が呆れ顔で溜め息をつく。
成実と慶次が話していると、開いた障子から宗時が顔を覗かせた。


「随分賑やかだと思っていたら、慶次が来てたのか」
「左馬之助!」
「相変わらずだな、お前は。また暫く此処に居るのか?」
「ああ、そのつもりだよ」
「俺に許可を得てから言いやがれ」


ぎろりと睨む政宗に慶次は笑い返す。それを見て、そうみたいだなと宗時は微笑んでから、小十郎と視線を合わせれば、失礼しますと小十郎は立ち上がって、二人とも部屋を出ていく。それを政宗は黙諾して慶次を見遣る。


「慶次、どうせ此処に居たって暇だろ。たまに悠の稽古つけてやれ」
「え!?」
「稽古?何の?」
「舞や歌詠みは得意だろ?」
「ええ!?俺のは教えるほどのもんじゃないよ?」
「なら、こうしようぜ。お前が悠に教えるなら、此処に暫く居たって構わねぇぜ。どうだ?」
「う…分かった、俺で良かったらやるよ。
よろしくな、悠」
「うん、こちらこそよろしく」


そう慶次と微笑み合って、視線を部屋の隅へ向ける。
手鞠でじゃれ合っていた梵天丸と夢吉が、いつの間にか縁側で寄り添って寝ているのを見て、皆で微笑み合った。





春の陽気を纏う人

100922:執筆

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