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「悠様、政宗様からのご希望で夕餉はご一緒にと」
「一緒に、ですか?」
「そうよ。政宗様と小十郎、成実と左馬之助にまだ会っていない綱元と一緒にね」


若い女中がそう部屋へと伝えに来た背後から、箱などを持った数人の女中を従えて喜多が入って来た。
女中達が部屋に入るや、箱や包みを開いていく。そこから出て来たのは、色鮮やかな着物に帯の数々だった。そして一人の女中が広げた化粧品に悠は青ざめた。


「や、いいですよ!遠慮しときます!」
「あら、殿方の御好意は受け取っておくものよ。あの政宗様からのご要望なら損はしないでしょう?さ、どれがいいかしらねぇ…」


着物をあれこれ宛がい始めた喜多に、頼みの綱が切れた悠は成す術も無く、素晴らしく仕立て上げられた……というのは、一刻前の話である。
現在、その"殿方"達と夕餉の最中なのだが、夕餉というよりもはや宴と化しており、名前を上げられた殿方だけでなく、家臣団や兵士達まで揃っている。
予想以上に多いなと悠が固まっていると、隣に座っている成実はにこりと笑った。


「緊張してる?」
「まあ…あの夕餉っていつもこんな感じなんですか?」
「いや。これは俺が言い触らしたからだな」
「…言い触らした?」
「伊達の一員となったからには、祝うのは当たり前だろ?」


お前か!と言いかけたが、慣れない着物で食欲すら湧かない。それに散々酔っ払いに絡まれて、悠は疲れきっていた。
それに気付いてか、上座で酒を煽っていた政宗が声を掛けた。


「悠、」
「っ!?」
「来い。折角着飾ったんだ、間近で見せろ」


ちらりと成実を見れば、梵がお呼びだよと小声で促される。政宗は愉し気に笑みを浮かべていて、促されるままに席を立って上座に上がり政宗の横に座る。すると成実が、もっともっとと小声で促す。
これ以上は無理だと成実に僅かに首を横に振ったところで、ぐいっと引き寄せられる。悠の目に、蒼色の着物とそこから覗く首筋と鎖骨が映る。近付いて更に香る香の匂いに思考が停止した。


「Oh、こりゃ中々のもんだな…」
「ままま政宗、近すぎ!!」
「Hum…俺を呼び捨てするか」
「え、あ!」
「まあいい。アンタの好きにしな。」
「…うん」


ぎこちなく頷くと、腰にあった手が頭を優しく撫でる。先程とは違った、嬉しそうに隻眼を細めて年相応に笑う政宗に、悠が危うく失神しそうになったのは言うまでもない。



091002

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