10

謁見を無事に済ませた悠は、喜多に着いて歩きながら、これからどうしたらいいのかとぼんやり考える。
身はここに置いてくれるようだが、まず情勢がどうなってるのか、悠は一番気になった。先ほど説明がてらに他勢力の話もしたのだが、今がどうなっているのかは教えてはくれなかったのだ。
まだ疑い半分なのだろうという事は悠にも分かっていた。もし聞いたりでもすれば、余計怪しまれるのは目に見えている。下手に言わない方がいいかと悠は小さく息をついた。
すると前方から、赤茶の髪と対称的に落ち着いた紺色の着物の前を肌けさせた、これまた美形で長身な男が歩いて来た。


「左馬之助、お出掛けですか?」
「ええまあそんなところです」
「先程、綱元が呼んでましたが」
「綱さんならさっきお会いしましたよ。ん?どちらさん?」


男は喜多から悠に視線を移し、僅かに首を傾げる。


「こちらは、政宗様がお連れした悠様ですよ」
「ああ、そういえば聞いたか」
「悠と申します」
「俺は、原田左馬之助宗時。左馬之助って呼んでくれ」
「はい」
「喜多さん、殿はどちらに?」
「政宗様なら大広間の方ですよ」
「そ、ありがとう。じゃあ俺はこれで……またな、悠」


悠に微笑んで、歩いて行った宗時を見送っていると、喜多が溜息をつく。それに気付いて見ると、喜多は苦笑を漏らす。


「変わっているでしょう?左馬之助はいつもあんな感じなの。鍛練や戦では違うんだけど」
「確かに皆さん達とは違う雰囲気ですね…」
「そうね、うちの連中って威勢がいいのばっかりだから余計なのかも」


ふふ、と笑った喜多に悠もつられて笑う。


「さて、夕餉前に湯浴みしましょうか」
「はい」






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