08

「梵が女の子攫ってき……あれ?」


どたどたと廊下を走る音が近付いてきたかと思えば、勢いよく障子が開く。
駆け込んで来た短髪で茶髪の青年は、外れた障子を一切気にする事もなく、上座の真向かいに座る悠を見て固まった。


「成実、お前何してたんだ」


低く威圧感丸出しの小十郎に、成実こと、伊達三傑の武を司る伊達 成実はへらりと笑った。


「俺?俺はいつも通り仕事だよ」
「ほう…道場で見掛けなかったがな?」
「厠だったんだって」
「成実、厩から一騎無くなっていたそうですが…ご存知ですよね?」
「う、あ…喜多さん、それは…」
「し げ ざ ね ?」
「……ちょーっと、そこまで…ね?」


小十郎を上回る程の喜多の威圧感に、若干青ざめた成実は苦笑いをして城下街の方へと指した。
それを見ていた政宗は半開きだった扇子を閉じ、溜め息をついた。


「成実、仕事しろ」
「そのお言葉、梵にお返しするよ。自分だって抜け出した揚げ句に、女の子攫ってきたんだろ?」
「テメェ、変な言い方するんじゃねぇ」
「で、梵が攫ったのがこちらの娘さん?」


成実が政宗から悠に目を移し、にやーと悪戯っ子のように笑う。


「へーえ、梵にしてはまーためっずらしー感じの娘さんだなー」
「成実、」
「はいはい、分かってるって。梵がいいってんなら俺は従うよ」


分かってるじゃねぇかという風に政宗は不敵な笑みすると、成実も自慢げに笑みを返す。
そのまま、悠に視線を移すとにこっと笑う。


「俺は伊達成実。まあ、梵の従兄弟ってやつだ。宜しくな!」
「葵龍悠です、宜しくお願いします」




090827

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