07

「…成る程な。じゃあ、その竜は泉で付けられたもんって事か」


一通り悠の話を聞き、政宗は閉じた扇子の先で左腕を指す。
悠は首を傾げて、その左腕を見るが、半袖から曝した左の二の腕は普段通りにしか見えない。


「…なにかついてます?」
「Ah?お前、見えないのか?」
「え?」


政宗と小十郎は顔を見合わせ、悠の左腕へ視線を落とす。
二人には、はっきりと青く光る鎮座する竜は見えていたが、悠には全く見えていなかった。
不思議そうに腕を摩っている悠を見て、政宗は僅かに目を細める。


「…そうか。アンタ、名は?」
「葵龍 悠です」


苗字もあんのか、と政宗が呟いて感心する。それに不満げな顔をする小十郎を横目に、政宗は左膝に肘をついて頬杖をつく。


「悠、"竜女"の話は聞いた事あるか?」
「りゅうめ?」
「ああ、簡単に言えば…災いを鎮める為に、天を守護する竜に生贄にされた女の話だ」
「いいえ、聞いた事ないです」


そうか、と政宗は左腕の竜を見遣った。
何故それを引き合いに出したのかと悠は眉を少し寄せる。悠には見えない左腕の竜も、何かしら関係しているように思える。それとも、と一つだけ思い浮かんだそれに、悠は口を開く。


「それは、」
「Ah?」
「私を生贄にするとかそういう事ですか?」


深刻そうな悠の表情に、政宗は目を丸くして吹き出す。傍の小十郎も何言ってんだと言わんばかりに見ている。


「ンな事するか。伊達家で語り継がれてる昔噺ってやつだ」


安心したように溜息をついた悠に、政宗は肩を震わせて笑う。どうやら、さっきのがツボに嵌まったようである。


「I like it.」
「え?」
「俺は奥州を束ね、"独眼竜"伊達政宗だ」
「ま、政宗様!」


政宗は手にしていた扇子を半分程開き、悠を見つめ返した。


「歓迎するぜ、竜のprincess」




top


「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -