04

重苦しい溜め息をついた青年の隻眼には、悠然と聳え立つ城が映る。
つい先程、政務という軟禁地獄から解き放たれたというのに、戻って来る羽目になっていた。


「仕方ねぇ、か…」


何時もならば、手にする事の無い手綱を握り、それと自分の間にある温かい重みに目を落とした。
正に"面妖"といえるその身なりに包まれた娘は、規則正しい寝息を繰り返している。
その娘に寄り添うように寝ている子猫の背を撫で、娘を抱え直すとゆっくりと馬を歩かせた。




――――――


「また、ですか」


長い黒髪を襟足で括った男は、溜め息と共に呆れた表情で告げる。


「政務が滞れば、私の仕事も滞るというのに…」
「悪い、綱元。俺がもっと見張っておけば…」


左頬に走る傷が特長的な恐面、片倉 小十郎は深い溜め息をついた。
彼が呼んだ"綱元"という長髪の男、鬼庭 綱元は笑みを浮かべる。


「義兄上の所為ではございませぬ。義姉上の言う通り…どちらにせよ、逃げ出すのは分かっておりました。夕刻ともなれば、戻って来ましょう」
「そうだといいが…よもや、甲斐まで行っていたらと思うと…」
「流石にそこまでは」


綱元が苦笑いすると、急に城内が騒がしくなり始めた。


「何だ、騒がしいな」
「大手門の方からの様ですね。もしや、何かあったのでは…」
「…見てくる」




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