「とてもお似合いでございますよ、侑果様!」
「はあ、ありがとうございます…」
千を含めた侍女達に着せ替え人形のようにされて、侑果はぐったりとしていた。
このままだと夕餉の宴まで持ちそうにないと侑果はぼんやりと思う。
――あの話し合いの後。
千は親貞を引き連れて部屋を後にし、皆がそれを呆然と見送った。それから孝頼に部屋と簡単に城内の案内してもらっていると、元親に呼ばれて共に元親の自室へ向かう。そこには、とても疲れたような表情している親貞と、それと正反対にとても晴れやかな笑顔を見せている千が居た。
どうやら、その小煩い老臣達を説得して、見事に首を縦に振らせたのだという。
女はどの時代でも強いということを改めて知った侑果であった。
「侑果様、」
不意に千に呼ばれた侑果が、首を傾げて見る。
千は帯を眺めてから侑果に視線を移し、柔らかく微笑む。
「私どもは嬉しいのです」
「え?」
「私どもは元親様の幼少から仕える身。元親様は私どもにとって、弟や息子同然のようなものです」
侍女達には、侑果程の若い者は居らず、殆どが家臣や兵を夫に持つような身である。目を細めて話す千は、まるで肉親のそれそのもので、それは他の侍女達も同じであった。
千が老臣達を説得出来たのは、きっとそういう思いから来ているのだろうと侑果は思った。
「これまで持ち掛けられた縁談は全て断り続け、土佐を出ては宝探しばかり…色事など全く無縁でございました」
「そうだったんですか…」
「ですが!」
突然がしっと掴まれた手と、きらきらと輝く期待の眼差しに、侑果はびくっと身を引く。
「その元親様が、"宝"と称する程のこの溺愛振り!」
「いえ、違います」
「そして、この岡豊城にお連れし、お傍に置くと…!」
「ただの保護です」
「いいえ、千には分かっておりまする。これは、元親様の不器用な愛だと…!」
「どんな愛ですか、それ」
「このまま真に元親様の正室になった暁には……ああ、千は嬉しゅうございますうう…!」
駄目だ、聞いちゃいない…と侑果は助けを求めるように他の侍女達へと視線を向けるが、こちらも同じように涙ぐんでいた。
「侑果様!」
「は、はいっ!」
少し涙ぐむ、千を含めた侍女達は、侑果を囲むようにじりと迫る。
気を圧された侑果は口元をひくりと引き攣らせて、一、二歩下がった。
「どうか、どうか、元親様を宜しくお願いしますね…!」
あれ、お千さんは事情を知ってる筈じゃないの…?と侑果は思いかけたところで、直ぐ様また着せ替え人形に戻る。
それは、親貞が声を掛けるまで延々と続いた。
彼女達の思い